前年度までにATLLの原因ウイルスであるHTLV-1感染やウイルス遺伝子TaxによってIRF5の発現が誘導されること、HTLV-1感染T細胞株やATLL症例のリンパ節の核内にIRF5の恒常的発現があることを確認した。HTLV-1感染T細胞株であるHUT-102細胞に対してsiRNAによるIRF5発現を抑制した結果、細胞増殖能への影響を認めず、非感染T細胞であるJurkat細胞にIRF5を過剰に発現させても細胞増殖能は影響を受けなかった。したがって、IRF-5は直接に細胞増殖には作用しないと考えられた。 次に、インターフェロン(INF)とIRF5の発現の関係を検討した。INF-α/β/γは種々のT細胞株において発現を認めたものの、HTLV-1感染やTax、IRF5発現との関連はなかった。また、Jurkat細胞にINF-αを作用させると、IFN応答遺伝子であるMxAや2-5 ASの発現誘導はみられたが、IRF5発現は誘導されなかった。すなわち、HTLV-1感染T細胞におけるIRF5発現にはIFNの関与はなく、IFNの発現にもIRF5の関与はなかった。 一方、前年度にJurkat細胞にIRF5発現ベクターを導入し、網羅的に遺伝子発現の変化を解析したが、TNFファミリーの遺伝子発現がIRF5により誘導されていたので、TNF-αとlymphotoxin-βの発現誘導をRT-PCRで確認した。TNF-αについてHTLV-1感染やTax、IRF5発現との関連を検討したところ、TNF-αの発現にはHTLV-1感染やTax、IRF5発現との相関が認められた。さらに、TaxによりTNF-αの発現誘導が認められた。このように、TNFファミリーの発現にはTaxとIRF5が協調的に関与している可能性が示唆された。 本研究課題の成果は学術論文として取りまとめ、国際的学術誌へ投稿し、現在印刷中である。
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