研究課題
若手研究(B)
がんの再発・転移はがん死要因の約 9 割を占めており、再発・転移性がんに対する効果的な治療が求められる。近年、がんの再発・転移の原因は治療後に残存するがん幹細胞であると考えられており、幹細胞様性質に加えて治療抵抗性を有することなどが報告されているが、がん幹細胞による再発・転移機構については未だ不明な点が多い。本研究では、これまでに申請者らが構築してきた人工がん幹細胞(induced Cancer Stem Cells; iCSCs)を用いたマウス発がんモデルを応用し、マウスがん再発モデルを構築する。マウス生体内で腫瘍を発生・ 退縮させた後に再発する腫瘍について経時的に詳細な解析を行うことで、がん再発機構の責任分子を同定することを目的とした。ALK R1275Q活性型変異体の単一遺伝子導入によりマウスおよびヒトNSC からiCSCを誘導し、iCSCをマウス脳内へ移植することで悪性脳腫瘍を作製することに成功しており、このシステムを応用して誘導型発がんモデルを構築するために、Tet-On systemを用いてDox投与依存的にALK R1275Q遺伝子を発現誘導できるTet-On-ALK R1275Q-Luc-hNSCの樹立を行っている。これまでに樹立した細胞をヌードマウス脳内に移植し、移植後当日よりDox含有餌を投与することでALK R1275Q-Luc-hNSCと同様に腫瘍形成を確認できており、さらに安定的な誘導型発がんモデルの構築を行っている。具体的には遺伝子発現ベクターを改変し、EF1-aプロモーターやP2A配列を使用することでALKや蛍光タンパク質、薬剤耐性遺伝子を同時に安定高発現させ、短期間で薬剤選択できる蛍光タンパク質陽性の細胞を樹立することができた。これらを使用することで実験条件を最適化し、細胞移植後の発がん過程における各種イベント発生の高い再現性が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的であるマウス発がんモデルの応用によるマウスがん再発モデルの構築ならびにがん再発機構の責任分子同定にあたり、in vitroやin vivoにおいて再現性が確保できる安定した実験系の樹立は必須であり、これまでの成果から実験系の最適化は順調に進展していると言える。
マウスがん再発モデルの最適化を進めつつ、マウス生体内で発生させた腫瘍ならびに退縮させた後に再発する腫瘍の解析を行う準備を整え、がん再発機構の責任分子の同定を目指す。
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http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140226/