研究課題/領域番号 |
25830092
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
高取 敦志 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ, 研究員 (40455390)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | NLRR1 / 細胞増殖 / 遺伝子改変動物 |
研究概要 |
本研究ではNLRR1を標的とした新規治療法のより効率的な開発につなげていくべく、NLRR1の受容体シグナル制御メカニズムの詳細を明らかにすることを目的としている。これまでに、NLRR1が細胞膜の脂質ラフト分画に存在し、NLRR1がEGFやIGFによるシグナル伝達を増強する機能にはこの脂質ラフトの構造が必要であることがわかってきた。そのため、本年度では主にNLRR1が脂質ラフトの構成要素に対して与える影響について解析を行った。まず、密度勾配法によりNLRR1発現細胞の細胞膜画分を分画化し、NLRR1タンパク質と脂質ラフトを構成する脂質成分であるコレステロールの局在を比較した。一般的にコレステロールの分布は脂質ラフトが含まれると考えられる低密度分画に多くなるが、NLRR1発現細胞では脂質ラフトマーカーであるFlotillin-1タンパク質の分布に変化がみられ、コレステロールの濃度も低密度分画に比べて高密度分画において高くなることが確認された。以前の検討において脂質ラフトの阻害剤であるMethyl-β-cyclodextrinの処理により、コレステロール濃度が減少し、NLRR1の機能が抑制されるという結果が得られていたことから、細胞膜におけるコレステロールの分布がNLRR1の機能に重要であると考えられる。そこで、Methyl-β-cyclodextrinの処理後に、コレステロールを培養液中に添加し、EGFによるEGFRおよびその下流シグナル分子であるERKの活性化について検討したところ、コレステロール添加によりNLRR1の機能に対する脂質ラフト阻害の影響が減弱されることが示された。 一方、成人がんにおけるNLRR1遺伝子の発現について組織切片アレイを用いた免疫組織化学的検索により検討したところ、乳がんや皮膚がんのがん組織においてもNLRR1の発現が認められたことから、神経芽腫のみならず、各種成人がんの発生・進展においてもNLRR1の関与が示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NLRR1の機能を制御するメカニズムの解析は順調に進んでおり、各種がん組織におけるNLRR1の発現解析についても順調に進んでいると考えられる。一方、他の受容体シグナルに対するNLRR1の機能解析については、まず以前作出したNLRR1ノックアウトマウスから胎仔線維芽細胞を得て、FGF処理によるERKのリン酸化の変化を検討したところ、EGFとは異なる影響を示す結果が得られている。さらに解析を進めることにより、NLRR1のシグナル伝達制御機構についてさらに明らかにできると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は特に他の受容体シグナルにおけるNLRR1の機能について解析を進めていく。 また、各種がん組織におけるNLRR1の発現解析についても、症例数を増やしつつ、免疫組織化学的検索以外の解析手法(タンパク質アレイやリアルタイムPCR)を用いて検討を行う。一方、細胞増殖効果を抑制するNLRR1抗体のうち、認識エピトープなどの性状解析を終えた抗体を用いて、抗体がNLRR1の膜分布に与える影響を脂質ラフトとの関連から検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子改変マウスを用いたコンパウンドKO マウスの作出に時間がかかっているため、それに必要な経費を次年度に使用する必要が生じたため。 遺伝子改変マウスの飼育・維持にかかる費用に使用し、引き続きコンパウンドKO マウスの作出を行う。
|