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2014 年度 実施状況報告書

神経芽腫の標的分子NLRR1による細胞増殖シグナルの選択的制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25830092
研究機関千葉県がんセンター(研究所)

研究代表者

高取 敦志  千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ, 研究員 (40455390)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードNLRR1 / 細胞増殖 / 遺伝子改変動物
研究実績の概要

本研究ではNLRR1を標的とした新規治療法のより効率的な開発につなげていくべく、NLRR1の受容体シグナル制御メカニズムの詳細を明らかにすることを目的としている。NLRR1はEGFやIGFなど細胞増殖を促進する成長因子によるシグナル伝達を正に制御し、がんの増悪化に寄与するが、他の増殖因子シグナルの制御については不明な点が多い。そこで本年度では、特に神経芽腫において発がんと悪性化に寄与することが知られており、治療標的として重要な受容体であるALK (Anaplastic lymphoma kinase)の機能に対するNLRR1の影響について検討を行った。
ALK遺伝子に変異または増幅がある神経芽腫由来細胞にNLRR1を発現させ、ALKおよび下流のシグナル分子のリン酸化について解析したところ、NLRR1の発現はALKおよびその下流シグナル分子のリン酸化を減少させ,細胞増殖を抑制することが明らかとなった。さらに免疫沈降法等による検討の結果、NLRR1はALKと細胞外ドメインを介して直接的な相互作用をもつことが明らかとなった。そこで、生体内でのALKに対するNLRR1の影響を明らかとするために、NLRR1遺伝子欠損マウスの後根神経節におけるALKの発現を免疫染色により観察したところ、野生型マウスに比べ著しい発現上昇が観察された。以上の結果から、NLRR1が受容体シグナルのうち特にALKを負に制御するメカニズムが明らかとなった。以前の研究において、NLRR1およびALKはいずれも神経芽腫の重要ながん遺伝子である MYCNにより転写制御を受けることが明らかとなっているが、タンパク質レベルでは両者に抑制的な機能制御があることが示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NLRR1の機能を制御するメカニズムの解析のうち、これまで細胞増殖を正に制御するメカニズムの解析は順調に進んできていたが、負に制御する受容体に対する影響については不明のままであった。本年度は特にALKがNLRR1により抑制的に制御されることを見出し、そのメカニズムの一部を明らかにした。特に、正に制御する受容体とは異なり、NLRR1とALKが直接的に相互作用するという新たな知見が得られた。一方で、正の制御が脂質ラフトにおける空間的制御メカニズムによるものであることが分かってきているが、直接的相互作用のあるALKの制御において脂質ラフトが果たす役割については今後の課題である。
NLRR1とALKの関係性については、NLRR1遺伝子欠損マウスを用いたin vivoにおける解析によっても裏付けられた。さらに解析を進めることにより、in vivoにおけるNLRR1の機能を制御するメカニズムを明らかに出来ると考えられる。

今後の研究の推進方策

今後は、直接的な相互作用が明らかとなったALKのシグナルを制御するメカニズムについてさらに解析を進めていく。NLRR1の細胞増殖促進効果を抑制するNLRR1モノクローナル抗体を取得していることから、NLRR1機能の抑制がALKの活性化に与える影響を検討する。
またNLRR1とALKの翻訳後修飾や脂質ラフトの影響を検討するために、糖鎖修飾の阻害およびラフトの阻害実験を行い、それらがNLRR1とALKの機能的相互作用に与える影響を検討する。
一方、神経芽腫症例におけるNLRR1とALKの機能的相互作用については不明のままである。これまでの検討から、mRNAレベルでの発現に関しては、症例サンプルにおいてもin vitroにおける実験においてもNLRR1とALKの発現には相関性が認められなかったことから、タンパク質レベルでの検討が必要である。そこで、神経芽腫組織におけるNLRR1とALKの発現について、免疫組織化学的検索により検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

遺伝子改変マウスの交配・維持を引き続き行わなければならないことから、その経費を次年度に使用する必要が生じたため。

次年度使用額の使用計画

遺伝子改変マウスの飼育・維持にかかる費用に使用し、引き続きコンパウンドKO マウスの作出を行う。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] NCYM, a Cis-Antisense Gene of MYCN, Encodes a De Novo Evolved Protein That Inhibits GSK3β Resulting in the Stabilization of MYCN in Human Neuroblastomas.2014

    • 著者名/発表者名
      Suenaga Y, Islam SM, Alagu J, Kaneko Y, Kato M, Tanaka Y, Kawana H, Hossain S, Matsumoto D, Yamamoto M, Shoji W, Itami M, Shibata T, Nakamura Y, Ohira M, Haraguchi S, Takatori A, Nakagawara A
    • 雑誌名

      PLoS Genet.

      巻: 10(1) ページ: 1-14

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1003996

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identification of novel candidate compounds targeting TrkB to induce apoptosis in neuroblastoma.2014

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Y, Suganami A, Fukuda M, Hasan MK, Yokochi T, Takatori A, Satoh S, Hoshino T, Tamura Y, Nakagawara A.
    • 雑誌名

      Cancer Med.

      巻: 3(1) ページ: 25-35

    • DOI

      10.1002/cam4.175

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Intracellular fragment of NLRR3 (NLRR3-ICD) stimulates ATRA-dependent neuroblastoma differentiation.2014

    • 著者名/発表者名
      Akter J, Takatori A, Islam MS, Nakazawa A, Ozaki T, Nagase H, Nakagawara A.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 453(1) ページ: 86-9

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2014.09.065

    • 査読あり
  • [学会発表] Neuronal Leucine Rich Repeat Protein1 (NLRR1) inhibits cell growth via suppressing NGF/TrkA signals in neuroblastoma cells2014

    • 著者名/発表者名
      Mayu Fukuda, Atsushi Takatori, Yohko Nakamura, Akira Nakagawara
    • 学会等名
      第56回日本小児血液・がん学会学術集会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      2014-11-28 – 2014-11-30
  • [学会発表] Neuronal Leucine Rich Repeat Protein1 (NLRR1) proteins repress NGF-dependent cell growth in neuroblastoma cells2014

    • 著者名/発表者名
      Mayu Fukuda, Atsushi Takatori, Yohko Nakamura, Akira Nakagawara
    • 学会等名
      第73回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [学会発表] Anti-NLRR1 monoclonal antibody inhibits growth of neuroblastoma xenograft in mice2014

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Takatori, Yohko Nakamura and Akira Nakagawara
    • 学会等名
      Advanced Neuroblastoma Research (ANR) 2014
    • 発表場所
      ドイツ・ケルン
    • 年月日
      2014-05-13 – 2014-05-16
  • [学会発表] Additional receptor tyrosine kinases compensate survival signals in ALK inhibitor-treated neuroblastoma cells2014

    • 著者名/発表者名
      Shunpei Satoh, Atsushi Takatori, Miki Ohira, Yohko Nakamura, Akira Nakagawara
    • 学会等名
      Advanced Neuroblastoma Research (ANR) 2014
    • 発表場所
      ドイツ・ケルン
    • 年月日
      2014-05-13 – 2014-05-16
  • [学会発表] γ-secretase mediated intramembrane proteolysis of NLRR3 leads to the liberation of its intracellular domain and its role in the NB differentiation2014

    • 著者名/発表者名
      Jesmin Akter, Atsushi Takatori, MD. Sazzadul Islam, Akira Nakagawara
    • 学会等名
      Advanced Neuroblastoma Research (ANR) 2014
    • 発表場所
      ドイツ・ケルン
    • 年月日
      2014-05-13 – 2014-05-16
  • [産業財産権] 抗NLRR1抗体2014

    • 発明者名
      中川原 章、高取 敦志
    • 権利者名
      千葉県
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2014/061759
    • 出願年月日
      2014-04-25
    • 外国

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公開日: 2016-06-01  

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