研究課題/領域番号 |
25830096
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
白木原 琢哉 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (30548756)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スキルス胃がん / 癌微小環境 / チロシンリン酸化 / FGF受容体 |
研究概要 |
難治がんであるスキルス胃がんの浸潤や腹膜播種に関わるリン酸化タンパク質を新規に同定することを目的とした実験を行った。研究計画の通りにスキルス胃がん細胞株と間質線維芽細胞との共培養によってチロシンリン酸化の亢進が認められるタンパク質を検出することを試みた。現在のところまだ再現性良く共培養でのみリン酸化が認められるような条件を定めることができていないため、今年度も引き続き培養条件の改良を行っている。一方、一部のスキルス胃がんではFGF受容体の増幅によりFGFシグナルが亢進していることが知られており、それががん細胞の増殖や浸潤転移に深く関わっていると考えられる。実際にFGFR2の増幅がみられるスキルス胃がん細胞株で受容体のノックダウンを行うとアポトーシスが誘導されて細胞の増殖が強力に抑制された。そこで、これらFGFシグナルが亢進しているスキルス胃がん細胞で特異的にチロシン残基がリン酸化されるタンパク質の探索を試みた。FGF受容体の阻害剤処理を行った細胞をネガティブコントロールとし、チロシンリン酸化抗体の免疫沈降で濃縮されるタンパク質のバンドを質量分析法で同定し、複数の候補分子を見出した。その中でもFGFシグナル下流で重要な機能を有する可能性のある2つの新規タンパク質に注目しており、現在これらの機能解析を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していたスキルス胃がん細胞とがん関連線維芽細胞(CAF)の共培養の条件が定まっていないために遅れが出ている。当初予測していた以上に共培養によるリン酸化の検出が困難であり、もし仮説通り2種の細胞の物理的な接触によって新たにリン酸化されるタンパク質が存在していたとしても、それを再現良く検出できる培養条件を定めるのはとても難しいことが判明した。そこで途中から予定を変更し、共培養と並行してスキルス胃がんを含む一部のがんで重要と考えられるFGF受容体の増幅に注目することにした。FGF下流のチロシンリン酸化タンパク質の探索は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はFGF受容体増幅による亢進するリン酸化タンパク質の探索によって同定した2つの分子ががん悪性度増進にどのような形で寄与しているかを明らかにすることをまずは目標とする。細胞株間比較によりこれらタンパク質の発現量はどのがん細胞株でもほぼ同様に発現しているのも関わらず、FGFR2の増幅がある細胞株でのみ強いチロシン残基のリン酸化が観察されており、FGFシグナルの下流でのリン酸化が何らかの役割を担っていると考えられる。リン酸化部位の特定やその部位の変異体を用いて機能解明を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では質量分析法で同定した分子の確認実験のために多くの抗体を購入する予定であったが、研究が予定通りに進展していないため。 前年度に予定していた抗体等の試薬の購入に充てる。
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