難治がんであるスキルス胃がんの増殖や浸潤、腹膜播種等に関与するチロシンリン酸化タンパク質を新規に同定することを目標に実験を進めた。研究開始当初はスキルス胃がんと線維芽細胞を共培養することで新規にリン酸化するタンパク質の発見を目指して様々な条件下での共培養を試みたが、ウェスタンブロットや銀染色レベルでは共培養特異的な変化を検出することができなかった。そこでスキルス胃がんでの遺伝子増幅と活性化亢進が高頻度に認められている膜型チロシンキナーゼFGFR2とMetに着目し、これらの遺伝子増幅のある胃がん細胞株でのリン酸化標的タンパク質を探索する方針へと変更した。FGFR2活性型胃がん細胞株とMet活性型胃がん細胞株をそれぞれ2種類ずつ用いて抗受容体抗体と抗リン酸化抗体の段階的なタンパク質精製を行った。質量分析法で精製タンパク質を解析した結果、それぞれの細胞株で約200の候補タンパク質を同定することができた。検出スコアのしきい値を上げて細胞株間比較を行い、FGFR2活性化型は25、Met活性化型は42の候補タンパク質まで絞り込んだ。なお、今回FGFR2型の候補とMet型の候補で共通するタンパク質は同定されなかった。同定した個々の候補タンパク質を評価した結果、スキルス胃がんの増殖に関与しているタンパク質Aと運動に関与しているタンパク質Bが明らかとなり、現在これらの詳細な機能解析を進行し論文執筆の準備に入っている。
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