我々は昨年度まで固形癌細胞での発現および機能が不明であったCD69分子のCCC細胞での機能解明を行ってきた。CD69特異的shRNAを定常的に発現させたノックダウン細胞を用いた実験により、CD69がCCC細胞の増殖および生存能には影響を与えない一方で、低酸素・無血清条件培養下においてCD69がFibronectinに対する細胞接着能を亢進させること、それによりCCC細胞の運動能、浸潤能を亢進することを示した。 今年度はCD69のターゲット分子として、主にインテグリンに着目して研究を行った。インテグリンは細胞膜表面に発現し、細胞外マトリックス構成成分との相互作用により様々な生理作用を制御することが知られている。このインテグリンのサブタイプのうち、Fibronectinを介した作用発現を担うβ1サブタイプについて、CD69発現による細胞接着能はその阻害抗体によって減弱することが認められた。さらにインテグリンβ1の活性について活性化型特異的抗体を用いたFACS解析によって評価したところ、低酸素・無血清環境ではCD69ノックダウンによってインテグリンの活性が減弱することが明らかとなった。またこの際、インテグリンを介した細胞接着反応により活性化されることが知られるFocal Adhesion Kinaseのチロシンリン酸化が、CD69依存的に亢進していることがWestern blot解析によって認められた。これらの結果から低酸素・無血清環境下において、CD69が顕著に発現誘導されたCCC細胞ではインテグリンの活性化が引き起こされることが示された。 本研究により固形癌における低酸素環境下における新たなCD69分子の生理機能の一端を見出したと言える。
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