研究概要 |
非小細胞肺癌において3’非翻訳領域(3’UTR)の短縮をおこしている遺伝子を検索するために、公開されているマイクロアレイデータをBioconductor上で解析し、非小細胞肺癌で特に3’UTRの短縮が起こりやすい10遺伝子(DIEXF, HN1L, MUC20, NDFIP2, SCAMP1, RBM33, C1orf52, ESYT2, SMC1A, SSR1)を同定した。非小細胞肺癌147例の切除検体よりRNAを抽出し、リアルタイムPCRを用いて10遺伝子の3’UTR短縮の程度をスコア化し検討したところ、3’UTR短縮は病期および再発率と相関し、多変量解析にて独立した予後不良因子であることが明らかとなった。また3’UTR短縮を防ぐと報告されている遺伝子PABPN1は肺癌において高頻度に発現が低下しており、PABPN1の発現低下は3’UTR短縮と相関し、PABPN1低下群は有意に予後不良であった。さらに3’UTR短縮は細胞増殖マーカー(MKI67, TOP2A and MCM2)の発現量やステージング時のPositron Emission Tomography (PET)における腫瘍のSUVmaxとも相関を認めた。 以上、非小細胞肺癌における3’UTRの短縮は腫瘍の悪性度、増殖速度のバイオマーカーとなっていることが確認された。3’UTRの短縮化によりmicroRNAによる転写後制御が破綻し腫瘍の悪性度に寄与している可能性が考えられる。またPABPN1の発現低下が非小細胞肺癌における3’UTR短縮化に寄与している可能性が示唆された。
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