パクリタキセルへの耐性を示す肺癌細胞株において,パクリタキセル耐性関連タンパク質 (paclitaxel resistance- associated protein)を同定することを目標として研究を行った.当初合成していたパクリタキセル固定化ビーズではバンドの回収に再現性を得られず,何度かの合成及び再現性の評価を行うことに時間を要した. パクリタキセル固定化ビーズの再合成後は安定したタンパク回収が可能となり,耐性細胞株であるRERF-LC-KJに特異的なバンドを回収可能であった.このバンドを回収した後にLC-MS/MS解析に供した. これらのうち,FIGNL1 (fidgetin like-1)タンパクが耐性細胞に特異的に強発現していたことを確認した. また,FIGNL1の機能解析を行うために,FIGNL1をsiRNAにてノックダウンし,パクリタキセルへの耐性の変化をIN-CELL analyzerで観察したところ,最も耐性のあるRERF-LC-KJにて耐性の低下を認めた.50%抑制濃度(IC50)の測定は未達であるが,もともとのIC50=40uMであるが,siRNAでFIGNL1をノックダウンした細胞株ではパクリタキセル濃度9nMでも増殖は60-70%のレベルまで抑制されていた.本来であればパクリタキセル感受性肺癌細胞株においてFIGNL1を強制発現させたときの耐性の変化を観察することが必要であったが,本研究では未達であった.
|