研究実績の概要 |
申請者らは、出芽酵母を利用した独自のPI3K阻害剤のスクリーニングシステムを用いて、文部科学省化学療法支援班の寄託化合物ライブラリーの中から、HDAC阻害剤であるロミデプシン(FK228:皮膚および末梢性T細胞リンパ腫に対するFDA承認薬)を含むデプシペプチド類縁体にPI3K阻害活性があることを新たに見出した(Saijo K.et al. Cancer Science, 103, 1994-2001, 2012)。デプシペプチド類縁体は、いずれもが強力なHDAC阻害活性を有するが、PI3K阻害活性に関しては、類縁体によってその活性が異なっており、構造活性相関の解析から新規類縁体を合成し、平成25年度はPI3K阻害活性および殺細胞効果の強い類縁体(FK-A11)の同定に成功した。さらにFK-A11のHDAC/PI3K 2重阻害活性について生化学的、物理化学的な解析を行い、HDAC阻害とPI3K阻害の活性部位が異なること、ATP競合阻害であること、PI3K(P110α)の4つのisoformを阻害すること、キナーゼのうちPI3K選択性が高いことを示し、平成26年度、論文発表を行った(Saijo K.et al. Cancer Science 106, 208-15, 2015)。また、平成26年度は、ヒト前立腺がん細胞移植マウスモデルにより、FK-A11が優れた抗腫瘍効果をもつことを示し、免疫組織染色法でHDAC/PI3K2重阻害活性が作用していることを確認した。本研究において、HDAC/PI3K dual inhibitorという新規薬剤開発を進めるうえでの、基礎的な成果を得ることができた。
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