研究課題/領域番号 |
25830111
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中田 飛鳥 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (70597921)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肺がん / イレッサ / gefitinib / EGFR-TKI |
研究概要 |
イレッサは上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼを特異的に阻害する阻害剤の一種であり、EGFRの変異のある患者に非常に高い効果が見られる。しかしながら、イレッサ投与後、数年以内にイレッサ耐性を獲得してしまうことが大きな問題となっている。申請者はイレッサ耐性を持つ肺腺癌由来PC9細胞(PC9M2)を樹立しており、このPC9M2株は従来知られているEGFR T790M変異やMETの増幅などのイレッサ耐性獲得形質を持たず、Wnt/βカテニン経路が親株(PC9)に比べて亢進していることが、細胞レベルで明らかになっていた。 そこで本年度では、PC9M2細胞にβカテニンに対するshRNAをレンチウイルスによって導入し、βカテニンノックダウン株を樹立した。コントロール株ではイレッサに対して耐性を示すのに対し、βカテニンノックダウン株ではイレッサに感受性を示した。 またマウスにPC9またはPC9M2株を移植し、生じた腫瘍を抗βカテニン抗体で染色し細胞内局在を観察したところ、PC9株の移植によって生じた腫瘍はβカテニンが細胞膜に限局しているのに対し、PC9M2株の移植によって生じた腫瘍ではでは細胞質と核に局在していることが分かった。さらに、EGFR変異をもつ肺腺がん患者の組織を用いてβカテニンの細胞内局在を調べた結果、イレッサの感受性とβカテニンの細胞膜局在が関連することが分かった。これらの結果からβカテニンの活性化がイレッサ感受性および耐性に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はマウスのxenograftの系においてPC9M2株のイレッサ耐性を証明する予定であったが、所属機関の異動の都合で予備実験しか実施できなかった。平成26年度に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
PC9M2細胞を用いた時系列マイクロアレイ解析結果からβ-cateninの標的遺伝子として知られている遺伝子のうちPC9M2細胞で発現が亢進している遺伝子を同定する。そして実際にPC9M2株でこれら標的遺伝子の発現が上昇していることをqRT-PCRやウエスタンブロッティングこれらの標的遺伝子の発現が亢進していることを検証する。 また耐性株における癌幹細胞シグナルの関与を検証する。PC9細胞を用いたsphere assayによるsphere 形成能の検討や、癌幹細胞マーカーとして知られている様々な表面抗原の発現の検証、免疫不全マウスへの移植による腫瘍形成能の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスのxenograftの実験が実験施設の都合で実施できず、平成26年度に実施することになったため。 マウスの皮下移植実験に用いる免疫不全マウスを購入し、個体レベルのイレッサ耐性メカニズムの解明を行う。
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