研究課題
イレッサはEGFRの変異のある患者に非常に高い効果が見られるが、数年以内にイレッサ耐性を獲得してしまうことが大きな問題となっている。これまで、EGFR T790M変異やMETの増幅などがイレッサ耐性に関与することが知られているが、これらの耐性機構を持たないイレッサ耐性を持つ肺腺癌由来PC9細胞(PC9M2)を樹立した。このPC9M2株ではWnt/βカテニン経路が親株(PC9)に比べて亢進していた。このイレッサ耐性株を免疫不全マウスに移植し、腫瘍形成能およびイレッサ感受性について検討を行った。PC9細胞を移植したマウスはイレッサを経口投与することによって腫瘍が退縮するのに対し、PC9M2細胞を移植したマウスではイレッサ投与後も腫瘍が増大した。また、このマウスから得られた腫瘍をβカテニン抗体で免疫染色した結果、PC9M2細胞から得られた腫瘍ではβカテニンが細胞質や核に局在していた。これらの結果からPC9M2細胞はin vivoにおいてもイレッサ耐性を示し、βカテニンが活性化していることが示された。またEGFR変異をもつ肺腺がん患者の組織を用いてβカテニンの細胞内局在を調べた結果においても、イレッサの感受性とβカテニンの細胞膜局在が関連することが分かった。これまで他の多くのイレッサ耐性株にはAktのリン酸化が見られることから、PC9M2細胞においても調べたところ、予想通り,Aktのリン酸化が亢進していた。さらにこのAktのリン酸化をAkt阻害剤で抑制するとGSK3のリン酸化が抑制され、βカテニンの発現が抑制された。本研究により明らかにしたメカニズムは、これまでに報告されているイレッサ耐性メカニズムにも共通する可能性が示唆され、βカテニン阻害薬はこれまで報告されているEGFR T790M変異やMETの増幅などの他のイレッサ耐性メカニズムを持つ腫瘍にも効果が期待できる。
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Briefings in bioinformatics
巻: 15 ページ: 906-18
10.1093/bib/bbt051