近年、がんを認識するキメラ抗原受容体(CAR:Chimeric antigen receptor)を発現したT細胞を投与するCAR-T細胞療法が注目を集めている。特に血液悪性腫瘍において優れた臨床効果を示しているが、固形がんに対する効果はいまだ確立していない。その原因の一つとしてがん局所における免疫チェックポイント分子を介した免疫抑制メカニズムが考えられている。そこで本研究では免疫チェックポイント分子を阻害する能力を付加したCAR-T細胞を作製しより強力な抗腫瘍効果を誘導することを目的とした。 まずCD20に反応するCAR(hCD20 CAR)コンストラクトを作製しこれをT細胞に発現させた。作製したCAR-T細胞に対しRNA干渉やシグナル伝達酵素の阻害により免疫チェックポイント分子の機能阻害を試みたものの十分な抗腫瘍効果の増強は得られなかった。そこで次に免疫チェックポイント分子阻害機能を導入したCARを作製し、これを発現させたT細胞によるがん治療効果の増強について検討した。 コントロールのCAR及び免疫チェックポイント分子阻害機能を有するCARコンストラクトをそれぞれマウスT細胞に遺伝子導入しCAR-T細胞を作製したところ、両者とも同程度のCAR発現レベルを示した。次に各CAR-T細胞の複数のがん細胞株に対するin vitro抗腫瘍効果を検討したところ、コントロールCAR-T細胞と比較し免疫チェックポイント分子阻害機能を有するCAR-T細胞において抗腫瘍効果の増強が示された。今後はin vivoにおける効果を検討する予定である。
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