研究課題
若手研究(B)
本研究では、非小細胞肺癌における、上皮成長因子受容体(EGFR)活性化による免疫抑制作用の解析と、EGFR特異的チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)によるその解除の検討、及び、EGFR-TKIの免疫細胞に対する、直接の機能増強作用の解析を目的とする。EGFR変異を持つ非小細胞肺癌細胞株は、免疫抑制性サイトカインを産生し、その産生はEGFR-TKIによって阻害された。EGFR変異のない細胞株では、変化は見られなかった。PTEN欠失による耐性細胞株においては、EGFR-TKIによりサイトカイン産生の一部が抑制された。これらの癌の細胞株の培養上清を含む培地で樹状細胞(DC)を培養すると機能低下が見られるが、EGFR-TKIを作用させた細胞株の培養上清を用いる事で、回復した。次に、EGFR-TKIのヒトDCに対する直接作用を評価した。ヒトDCにEGFR-TKIを作用させると、DCのT細胞刺激能などの機能が増強した。ヒトDCにはEGFRを発現していなかったため、EGFR-TKIは、DCに対して直接にEGFRシグナル非依存的に、機能を増強させる可能性が示唆された。次に、EGFR-TKIのin vivoにおける抗腫瘍免疫応答に対する作用を検討した。野生型EGFRを発現するマウス癌細胞株を用いた担癌マウスモデルでは、腫瘍抗原特異的なT細胞応答がEGR-TKI投与によって増強した。さらに、免疫療法にEGFR-TKIを併用すると、免疫療法の抗腫瘍効果が増強された。以上の結果より、EGFR-TKIは非小細胞肺癌に対して、腫瘍細胞からの免疫抑制性分子の産生を抑制すること、DCなどの免疫担当細胞に直接機能増強作用を及ぼすことの二点で、抗腫瘍免疫応答を増強すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、①非小細胞肺癌での各種免疫抑制分子の発現とその発現メカニズム②非小細胞肺癌による免疫抑制の誘導とEGFR-TKIによる回復の検討③EGFR-TKIの各種免疫細胞に対する直接作用とそのメカニズムの検討。を予定していた。①に関しては、合計6種の肺癌細胞株で検討できた。そのメカニズムも、各種シグナル経路のWestern blotなどで、解析中である。②に関しては、仮説どおり検証できた。③に関しては、DCについて検証でき、関与するシグナル経路についてWestern blotで解析中である。さらに、in vivoのマウスモデルにおいても、免疫療法との併用効果が示せた。以上の様におおむね予定通り進んでいる。
今後は、①EGFR-TKIが免疫応答に与える影響をマウスモデルを用いて解析する事。②EGFR-TKIと免疫療法の併用効果をマウスモデルを用いて検証する事③EGFR-TKI 投与非小細胞肺癌患者の血清中サイトカインや末梢血単核球(PBMC)の機能、およびそれらと臨床病理学的因子との相関を解析する事、を中心に進めていく。また、本年度の成果のさらなる解析として、EGFR-TKIの各種免疫細胞に対する直接作用とそのメカニズムを解析も進める。
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