研究課題/領域番号 |
25830123
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
福原 武志 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (20359673)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イムノトキシン |
研究概要 |
既存の抗がん剤である低分子化合物と抗体を組み合わせた抗体薬物架橋体(ADC: Antibody Drug Conjugate)が開発されつつあるが、標的化を可能とする抗体の包括的な探索については技術も知見も十分に成熟していない。標的化抗体作製の基盤技術を開発し、メラノーマを標的化できる抗 IL13Ra2 抗体(NS66)を見出していた。 平成25年度における到達目標は以下のとおり(1)Flow cytometry によるIL13Ra2 のメラノーマ細胞株における発現, (2)KSN/Slc ヌードマウスに移植したメラノーマ細胞株の造腫瘍性, (3)NS66 抗体の大量調製 以下、研究実績の概要を記す:(1)メラノーマ細胞株11種類について、Il13Ra2の発現を検討した。全ての細胞が陽性ではなかったが、確かに一部のメラノーマ細胞では発現していることが確認された。また、flowcytometryによる解析に加えて、このうちの幾つかの細胞については、IL13Ra1ならびにIL4 (co-receptorとして知られる)についてリアルタイムPCRによって発現量を検討した。(2)メラノーマA375細胞株を含む11種類の細胞株についてKSN/Slcを宿主とした坦癌モデルの可能性を検討した結果、NS66クローンを得た抗原細胞でもあるA375細胞が相応しいと判断した。造腫瘍性を検討した期間は最長で6ヶ月であるが、造腫瘍性を示さないメラノーマ細胞株も存在した。(3)NS66クローンを無血清培地(Cosmedium005)によって培養し、Protein G Sepharoseを用いてanti-IL13Ra2抗体を大量調製した。この抗体を125マイクログラム、KSN/Slcヌードマウスに投与したが、明らかな毒性は示さなかったので、今後治療実験に使う材料とする。上記の計画目標に到達したと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた計画(1)-(3)については、目標到達したと考えている。さらに以下に記した(4)-(6)について、25年度から現在まで引き続き取り組んでいる。平成25年度および26年度を想定した研究計画は以下のとおり (4)DT3C 組み換えタンパク質の大量調製, (5)イムノトキシン NS66:DT3C によるA375 に対するin vitro 殺癌効果, (6)A375 メラノーマ担癌マウスに対するNS66:DT3C イムノトキシンによる治療実験 以下、現在までの達成度について記した。(4) DT3CをM15(pREP4)大腸菌を宿主として大量調製する方法は確立(1Lから5mg-10mg)したが、His-tagによるアフィニティ精製ではエンドトキシン除去ができず、治療実験には十分量を適用できなかった。エンドトキシンの除去を複数こころみたが、EndTrapでも十分な収率と除去レベルに至らない。ごく最近、Lucigen社が販売する大腸菌Clearcoli(LPSを脂質に変換する)を宿主として組み換えタンパク質を発現•精製することでエンドトキシンフリーとすることを目指しつつあり、現在までに発現誘導とNiNTA agaroseによるHis-tag DT3Cのアフィニティ精製に成功したので、今後、大量精製のための条件最適化を行う。(5) DT3Cを利用したin vitroにおけるA375に対する殺癌効果は、信頼度高く再現されている。この実験におけるDT3C:NS66複合体のIC50は、数十nM程度であった。(6) 予備的実験として、合計4度の実験をすすめたが、いずれもNS66:DT3Cによる有意な治療効果を認めなかった。しかしながら、腫瘍内投与後の造腫瘍性は一時的に抑制されたとみられ、エンドトキシン除去したDT3Cを用いて増量したイムノトキシンによる治療効果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
特に(4)および(6)について推進していく。(4)DT3C 組み換えタンパク質の大量調製, (6)A375 メラノーマ担癌マウスに対するNS66:DT3C イムノトキシンによる治療実験 以下に概要を記す。(4) 大量培養および精製のための条件最適化を行ったのち、Clearcoliを宿主としたDT3C精製標品の毒性を検定する。これはKSN/Slcヌードマウスに125マイクログラムを投与して評価するとともに、毒性が観られない場合には、さらに10倍量を投与する。これまで毒性がある場合には、2日目までには結果がでるが、生存した場合には最長で1ヶ月目まで観察を行う。(5) エンドトキシンフリーなDT3Cを用いてin vitro 殺癌効果を検討するとともに、IC50を算出する。また、あらたな方策としてDT3C:NS66を混合してアフィニティによる複合体形成をさせたあと、クロスリンクによって架橋複合体を作成することを検討している。これは、従来混合したイムノトキシン複合体を利用してきたが、架橋複合体のほうがより強い効果を示すのではないかという仮説に基づくものである。架橋複合体の効果が高いことが検証できれば、これを動物実験に利用することが望ましい。(6) 動物実験として(4)ならびに(5)の問題点を克服し次第、担癌モデルマウスにおける検討を行う。実験のデザインについては、計画のとおりで特に変更は無い。(その他)特筆すべきことに、新たに取得していたIL13Ra2抗体(KH7B9)は、ウエスタン解析、腫瘍塊のパラフィン薄切片における腫瘍部を認識することができる抗体である。これを利用した担癌モデルマウスの評価、ならびにTissue microarrayによる解析について、本研究計画には記載していないが推進する予定である。
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