精製したγδ T細胞にCD3刺激し24時間後の4-1BB、PD-1の発現が最大に増強したため、この時点のγδ T細胞を以後の実験に使用した。γδ T細胞と抗PD-L1抗体共培養によりCD69の活性はCD3刺激単独と比較して1.7倍に有意に増強した。アポトーシスを呈したγδ T細胞の割合は抗PD-L1抗体により有意に減少した。IFNγの産生は併用により1.5倍増強したが有意差は認めなかった。パーフォリン、グランザイムに関しても同様の結果であった。ヒト膀胱癌細胞株TCCSUPに対する抗腫瘍効果は併用により1.5倍向上したが有意差は認めなかった。一方253Jに対しては併用でも抗腫瘍効果の向上を認めなかった。腫瘍細胞株による抗腫瘍効果の違いはTCCSUPがPD-L1が中等度発現していたのに対して253Jは殆ど発現していなかったこと、即ち腫瘍細胞側のPDL1発現の程度によるものであることをフローサイトメーターで証明した。以上よりPDL1+の腫瘍細胞株に対してはγδ T細胞の副刺激を調節した抗腫瘍効果の向上を認めたが、CD3/TCR刺激と比較し有意差を証明できなかった。 更にco-inhibitory receptorであるPD1について培養スケジュールにおけるγδ T細胞のプロファイルを行った。フローサイトメーターから培養3日目に最もPD1+γδ T細胞の割合が多かったが、10日間の培養により45~50%のγδ T細胞はPD1+で残りの半数はPD1-であった。そのため10日間の培養後全てのγδ T細胞を使用した本実験ではPD1/PDL1経路遮断の有用性を証明できなかったと考える。培養3日目のγδ T細胞、または10日間培養後、ソーティングしたPD1+γδ T細胞のみを対象とすれば有用性を証明できる可能性はあると考える。しかし、担癌状態の患者のγδ T細胞の培養効率が悪いことを考慮すると臨床的に意義が少ないと考える。以上より本実験ではγδ T細胞を用いた養子免疫療法における4-1BB/4-1BBL、PD1/PDL1を介した副刺激調節の意義を証明できなかった。
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