研究課題/領域番号 |
25830126
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石原 誠人 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (60581189)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 膜プロテオーム / 糖鎖 |
研究概要 |
我々はHTLV-1が主に末梢血中のCD4陽性T細胞に感染・潜伏することに着目し、膜表面分子を標的としたATL新規治療法の開発を目的として、CD4陽性T細胞における膜プロテオームプロファイル解析を行った。まず正常(n = 14)、無症候性感染者(n = 21)、ATL患者(n = 13)、HAM/TSP患者(n = 21)より末梢血を採取し、フローサイトメトリーを用いてCD4陽性T細胞を単離した。次に膜プロテオームに焦点を絞るため、これらのサンプルのトリプシン消化物からConA-Lectinアフィニティークロマトグラフィーにより糖ペプチドを濃縮した。サンプルをLTQ-Orbitrap Velosにより解析し、最終的に946 糖タンパク質(6,791 糖ペプチド、FDR < 0.01)を同定した。これら同定されたペプチド中、Welch検定を用いた2群検定で有意(p < 0.05、fold change > 2)にATL患者のCD4陽性T細胞で発現が上昇している、あるいはATL患者のCD4陽性T細胞のみで発現しているペプチドを単離した結果、ATLの治療標的候補として25タンパク質 / 71ペプチドを同定した。これらの25タンパク質のうち8タンパク質は以前にHTLV-1感染によって発現上昇するタンパク質としての報告があり、以上の結果から我々の行った糖ペプチド濃縮を用いた膜プロテオーム解析が新規抗体治療薬の開発を目的とした治療標的分子の探索に効率的に結び付くことが示された。今後残る19タンパク質の中から正常臓器での発現が少なく、治療法開発にあたって副作用の少ないと目される治療標的候補に対しATL細胞株、ATL患者検体を使ったバリデーション実験を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は抗体治療などに用いる治療標的の同定を研究期間内の最終目的としており、年度内には患者検体のスクリーニングによる治療標的候補タンパク質の同定まで終える予定であった。現在、バリデーション実験をすでに開始しており、すでに特に有望な1候補タンパク質に対する定量解析を行うための系の樹立を終え、JSPFADから提供されたATL、キャリア検体を用いたバリデーション実験を開始する段階にある。これらのことから当初予定していた研究予定より早いペースで研究が進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
進行中のバリデーション実験に加え、上記プロテオーム解析で同定された残りの治療標的分子候補に対する100症例規模のバリデーション実験を行う。具体的には抗体作製、及びそれを用いたFlow cytometryを用いた定量系、また抗体作成が困難な分子に対しては質量分析を用いた定量法であるMultiple Reaction Monitoring(MRM)法による定量系を確立し、全候補タンパク質に対してバリデーション系を確立する。最終的に正常組織における発現や、治療標的分子候補に対して作成した抗体を基にADCC活性、CDC活性を計測し、ATLに対する治療用抗体の実用化が最も期待される候補分子群を1~5個選別する。
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