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2013 年度 実施状況報告書

器官再生において再生芽細胞の脱分化と再分化を制御するエピジェネティックな機構

研究課題

研究課題/領域番号 25830133
研究種目

若手研究(B)

研究機関岡山大学

研究代表者

板東 哲哉  岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60423422)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード再生 / エピジェネティクス / 脱分化 / ヒストンH3K27me3 / ポリコーム
研究概要

哺乳類や鳥類の器官再生能は低く、手足を失うと二度と再生することはない。これに対してコオロギなど不完全変態昆虫は高い再生能を有する。フタホシコオロギの脚を切断すると、切断面が傷上皮で覆われ、傷上皮下に再生芽が形成される。再生芽細胞は分化した細胞が脱分化した細胞と考えられており、増殖能が高く多分化能を有し、失われた器官を再生する細胞のソースとなる。再生芽細胞はパターン形成遺伝子の働きにより分化細胞へと再分化し、器官再生に寄与する。脱分化過程や再分化過程における遺伝子発現の変化はエピジェネティックな調節を受けると考えられている。再生過程に働くエピジェネティック因子を網羅的に単離するため、再生脚の形態変化を指標としたRNA干渉法(RNAi)による機能的なスクリーニングを行い、ヒストンH3K27メチル基転移酵素Enhancer of zeste (E(z))とヒストンH3K27脱メチル化酵素Utxが再分化に必要であることを見いだした。
トリメチル化ヒストンH3K27(ヒストンH3K27me3)レベルはE(z)(RNAi)個体では著しく減少し、Utx(RNAi)個体では上昇していた。いずれのRNAi個体も再生脚の形態異常が見られた。再分化過程に働く遺伝子を単離する目的で脚再生過程のRNA-Seqを行ったところ、脚パターン形成遺伝子などの配列情報が得られた。RNAi個体の再生脚における脚パターン形成遺伝子群の発現変化を調べている。
また、フタホシコオロギと近縁なタンボコオロギを使って脚再生過程を観察した。E(z)(RNAi)を行ったタンボコオロギの再生脚の形態変化はフタホシコオロギで見られた変化と同様であり、ヒストンH3K27me3を介した脚再生過程における遺伝子発現のエピジェネティックな変化は進化的に保存されたメカニズムと示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ゲノム編集技術に関して、申請時にはZinc Finger NucleaseやTALE Nucleaseが使用されていたが、現在ではCRISPR/Cas9システムが普及しつつある。本研究で実施予定のゲノム編集実験でもTALENではなくCRISPR/Cas9システムの利用を検討しており、実験に遅れが出ている。
ChIP-Seqを行う目的で、ヒストンH3K27me3を認識する抗体を用いた免疫染色を行っている。ポリクローナル抗体を用いたヒストンH3K27me3の可視化には成功しているが、ChIPグレードのモノクローナル抗体を使用すると交叉反応が見られないため、さらなる条件検討を進める。

今後の研究の推進方策

ヒストンH3K27me3を認識するChIPグレード抗体の反応条件の検討をさらに進め、ChIP-SEQを行いたい。予備実験として、E(z)(RNAi)個体やUtx(RNAi)個体の再生脚での脚パターン形成遺伝子の発現変化を調べており、RNAi個体においていくつかの遺伝子の発現が変動することを明らかにしている。前年度に行ったRNA-Seqの結果を元にゲノム構造を明らかにし、ヒストンの修飾が脚パターン形成遺伝子の近傍で起こっているかを解析することで、ヒストンH3K27me3レベルの変化と脚パターン形成遺伝子の発現の変化の関連を明らかにしたい。
CRISPR/Cas9システムのコオロギへの応用は、まずは変化が可視化可能な遺伝子についてゲノム編集を行い、続いて外来遺伝子のノックイン実験を進める予定である。従来型のMonomeric CRISPR-Cas9 nucleasesの使用を考えていたが、最近、Dimeric CRISPR-Cas9 nucleasesが開発され、ゲノム編集の際のオフターゲットをより少なくできるようになった。コオロギはゲノムサイズが大きいため、新しいCRISPR/Cas9システムを用いて実験を進めていきたい。

次年度の研究費の使用計画

ChIP-Seqの実験が予定通りに進まず繰越金が生じた。
平成26年度は、抗ヒストンH3K27me3抗体を用いたChIP-SEQを行う。平成25年度の未使用額は、次年度にChIPグレード抗体を用いた抗体反応の条件検討実験に使用したい。
またゲノム編集技術を応用した外来遺伝子の導入については、最近開発されたDimeric CRISPR-Cas9 nucleasesを用いて実験を進めたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] An extended steepness model for leg-size determination based on Dachsous/Fat trans-dimer system.2014

    • 著者名/発表者名
      Yoshida H, Bando T, Mito T, Ohuchi H, Noji S.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 4 ページ: 4335

    • DOI

      doi: 10.1038/srep04335.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] コオロギ脚再生の分子メカニズム2014

    • 著者名/発表者名
      板東哲哉、三戸太郎、野地澄晴、大内淑代
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 32 ページ: 15-21

  • [雑誌論文] The expression of LIM-homeobox genes, Lhx1 and Lhx5, in the forebrain is essential for neural retina differentiation.2013

    • 著者名/発表者名
      Inoue J, Ueda Y, Bando T, Mito T, Noji S, Ohuchi H.
    • 雑誌名

      Dev Growth Differ.

      巻: 55 ページ: 668-675

    • DOI

      doi: 10.1111/dgd.12074.

    • 査読あり
  • [学会発表] コオロギに学ぶ器官再生の分子メカニズム2014

    • 著者名/発表者名
      板東哲哉、濱田良真、富岡憲治、野地澄晴、大内淑代
    • 学会等名
      第119回 日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      栃木県下野市
    • 年月日
      20140327-20140329
    • 招待講演
  • [学会発表] Molecular basis on tissue regeneration in the cricket as revealed by RNA interference.2014

    • 著者名/発表者名
      Tetsuya Bando, Yoshimasa Hamada, Kenji Tomioka, Taro Mito, Sumihare Noji , Hideyo Ohuchi
    • 学会等名
      International Symposium on RNAi and Genome editing methods
    • 発表場所
      徳島県徳島市
    • 年月日
      20140313-20140316
    • 招待講演
  • [学会発表] 器官再生において再生芽細胞の再分化を制御するエピジェネティックな機構2013

    • 著者名/発表者名
      板東哲哉、濱田良真、三戸太郎、野地澄晴、大内淑代
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会
    • 発表場所
      兵庫県神戸市
    • 年月日
      20131203-20131206
  • [学会発表] 再生を制御する普遍的分子機構の解明:昆虫の脚再生からヒト器官再生を目指して2013

    • 著者名/発表者名
      板東哲哉、濱田良真、富岡憲治、野地澄晴、大内淑代
    • 学会等名
      日本解剖学会 第68回中国・四国支部学術集会
    • 発表場所
      鳥取県米子市
    • 年月日
      20131019-20131020
  • [学会発表] フタホシコオロギ脚再生過程におけるパターン形成遺伝子のエピジェネティックな発現制御2013

    • 著者名/発表者名
      板東哲哉、濱田良真、富岡憲治、三戸太郎、野地澄晴、大内淑代
    • 学会等名
      日本動物学会第84回岡山大会
    • 発表場所
      岡山県岡山市
    • 年月日
      20130926-20130928
  • [学会発表] 脚再生過程においてJAK/STATシグナルは再生芽細胞の増殖を制御する2013

    • 著者名/発表者名
      板東哲哉、三戸太郎、大内淑代、野地澄晴
    • 学会等名
      第46回日本発生生物学会
    • 発表場所
      島根県松江市
    • 年月日
      20130528-20130531

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公開日: 2015-05-28  

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