研究課題
若手研究(B)
近年DNAシークエンス技術やゲノムワイド関連解析技術の発展に伴い、多くの疾患関連多型が見出されてきている。しかし、その多くは非エクソン領域中に存在しており、それが疾患の原因となっているのか、または中立な多型であるのかを判断することが困難であった。非エクソン領域中の一塩基多型(SNP)がヒト遺伝性疾患の原因であるか否かを判断する一つの方法は、ヒト正常細胞に当該SNPを導入し、表現型を調べることである。しかし、既存の方法でゲノム中の特定一塩基を置換した細胞株を樹立することは困難であった。本研究では、1) 人工ヌクレアーゼTALENを利用した効率的一塩基置換導入法を開発し、さらに、2) 本法を用いてヒト正常細胞に、遺伝子間領域中に認められる染色分体早期解離(PCS)症候群の発症に関連するSNPを導入し、本疾患との因果関係を明らかにすることを目的として研究を行った。一塩基置換を導入するために以下の手法を考えた。まず、TALENを利用して目的一塩基多型付近のゲノムDNAを切断し、相同組換え修復を介して薬剤耐性遺伝子を挿入する。このセレクションカセットにはhsvTK遺伝子が含まれており、ガンシクロビル処理することにより細胞を死滅させることができる。その後、セレクションカセット両端を切断するTALEN、ターゲティングベクターおよびガンシクロビル処理を利用してこれらを除くとともに、目的一塩基置換を導入する。研究代表者は上記の手法をヒト結腸がん細胞HCT116に応用し、PCS症候群の発症と関連するSNPを両対立遺伝子に導入することに成功した。さらに、細胞生物学的解析から、本手法で確立した細胞がPCS症候群患者細胞と同様の形質を示すことが明らかとなった。このことから、本SNPがPCS症候群発症の原因となっていることが強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初大きな目的の一つであった、PCS症候群と発症関連一塩基多型の因果関係が明らかとなったため、研究自体は順調に進んでいると判断する。ただ、一塩基置換導入の効率は高いとは言えず、まだ改良の余地が残されている。一塩基置換導入技術は疾患の原因解明だけに留まらず、基礎研究はもちろん農学分野など幅広い領域で求められている技術であり、より効率的に、簡素に一塩基置換を導入する手法を開発する必要があると考えている。
今後は、より効率よく一塩基置換の導入を行うために、一塩基置換感受性人工ヌクレアーゼの開発を行う。これと一本鎖DNAを利用して効率的一塩基置換導入法の確立を目指す。
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実験医学別冊 最強のステップUPシリーズ 今すぐ始めるゲノム編集 TALEN&CRISPR/Cas9の必須知識と実験プロトコール
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