研究課題/領域番号 |
25830139
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上野 敏秀 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40381446)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 変異解析 / バイオインフォマティクス / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
がんにおけるゲノム変異の解明は、発がんの直接的な原因異常の同定に繋がり、それらの異常遺伝子を標的とした新たな治療法開発のための重要な知見となる。次世代シークエンサーの普及によりがんゲノム・エピゲノム解析を個々の研究室で遂行可能になったものの、解析検体内の正常細胞の混入あるいはがん腫内のクローン多様性のため、解析プログラムに様々な工夫をしないと発がんの本質的原因を明らかにすることは困難である。本研究では、次世代シークエンサーで得た塩基配列データから発がんの本質的原因遺伝子の同定を目的としたパイプラインを構築し、実際の臨床検体解析における有効性を検証した。 次世代シークエンサーからcDNAをキャプチャーしたものとゲノムDNA基質をシークエンスものについて、それぞれに対応する変異解析プログラムを作成した。特に変異コールの偽陽性を減らすためのフィルター設計を重点的に行い、リード(FASTQ)に付加しているクオリティー、マッピングの正確性、候補に挙がった変異箇所の信憑性、などに対するフィルターを組み込んでいる。変異をコールする前のフィルターの設計は、既存の解析ツール、例えば Genome Analysis Toolkit (GATK) や MuTect で変異をコールする際にも偽陽性を減らすのに効果的であった。 解析検体数が増えてきてがん腫ごともしくはがん腫を超えて特徴を掴むことが可能になったため、多検体間のプロファイリングを可能にするツールを開発した。がん腫特有に見られる遺伝子変異のパターンや原因遺伝子同定のための戦略に効果を発揮している。現在までに 300 検体以上を開発したツールで解析を行い有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度はcDNAキャプチャー法で得た次世代シークエンサーデータから変異探索システムの構築を目指していたが、cDNAキャプチャー法だけでなくゲノムDNA基質をシークエンスしたデータに対しても変異解析プログラムの開発にも着手できた点は研究の進捗としてかなり順調である。しかし、解析システムにおいて点突然変異と挿入欠失については概ね完成したものの、遺伝子融合のプログラム開発には本格的に着手できておらず、DeFuseなど既存のツールを使って解析を進めている状況である。今後は遺伝子融合探索においても独自のプログラムを開発することを目指す。 多検体の解析結果を用いたプロファイリングは、平成26年度に予定していた項目であるが前倒しすることができている。また開発したプログラムをスーパーコンピュータ上で動作させるための移植なども着手していて、二年間という研究期間で進捗状況を判断すると概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
一つ目は、cDNAキャプチャー法のデータから遺伝子融合を探索するプログラム開発である。DeFuseなど既存の遺伝子融合解析ツールでは、多くの融合遺伝子候補が得られるものの偽陽性が多く含まれるため精度の点から改善の余地があると考えている。マッピングのリード長や候補リードの選別などより細かい解析ステップを設計することで精度を高める工夫を凝らしていく。 二つ目は、解析結果によるデータベースの構築を行いたい。解析検体数が増えたことで検体間の比較やがん腫の特徴を掴むことができるようになってきたが、変異候補数の増加が著しく変異の羅列ではリストにするのが困難になってきた。cBioPotal などデータベース支援ツールなども考慮し解析結果を有効に活用するためのシステムを構築したい。 三つ目は、正常検体のデータベース化に取り組みたい。腫瘍検体だけでなく正常検体の解析結果を纏めておくことは、腫瘍検体の変異候補を絞り込むのに大変有効である。正常検体の結果をまとめる枠組みを考案したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費使用における調整の結果。 物品費として使用予定。
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