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2014 年度 実施状況報告書

種間比較に基づく大型ゲンゴロウ類の生態の解明と保全

研究課題

研究課題/領域番号 25830152
研究機関長崎大学

研究代表者

大庭 伸也  長崎大学, 教育学部, 准教授 (20638481)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード絶滅危惧種 / 水生甲虫 / 標識再捕獲 / 生活史 / 集団遺伝構造
研究実績の概要

本研究の目的は、個体数を減らしている大型ゲンゴロウ類であるゲンゴロウ(ナミ)とクロゲンゴロウ(クロ)がいる一方で、コガタノゲンゴロウ(コガタノ)が、近年増加していることに着目し、これらの基礎生態と減少(増加)要因を解明することである。2年目は、各温度に対する羽化率、水中での活動性の比較、野外調査、系統地理解析を実施した。
温度別の羽化率を調査するため、異なる温度条件下(20,25,28,30℃)で幼虫~羽化まで飼育した。その結果、ナミとクロでは30℃で他の温度に比べて有意に羽化率が低下した。一方、コガタノでは、30℃で最も高い羽化率を示し、20度ではほとんど羽化に至らないことが判明した。水中での活動性を比較すると、コガタノ、ナミ、クロの順に活発であり、ナミとクロはオスがメスに比べて活発であったが、コガタノにはそのような性差は認められなかった。このことから、コガタノはもっとも活発に動くことが分かった。野外の湿地でコガタノの幼虫の採餌生態を明らかにしたところ、本種も他の2種と同様にトンボ目の幼虫を中心とした昆虫食であることが判明した。続いて、飛翔による個体群間の移動実態を把握するため、長崎県の対馬・五島などの離島を含む、西日本各地のコガタノとクロについて、mtDNAのCOI領域の配列決定を行った。その結果、クロは離島と九州・中国地方の個体群と別クレードに分かれるが、コガタノは離島と九州・中国地方の個体群には明確な遺伝的差異が認められなかった。採集地点間の距離と遺伝的距離の関係を解析したところ、クロでは正の相関があるのに対し、コガタノでは相関が認められず、地点間の遺伝的変異が小さいことが判明した。以上から、コガタノの地域間の変異の小ささは高い飛翔能力に由来するものと推察される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

おおむね良好。

今後の研究の推進方策

3年目は、2年目までの実験・調査だけでは解明できなかった飛翔能力の実測(フライトミルを用いた飛翔距離の測定)、増力能力(産卵期間の推定)に加え、発育ゼロ点のデータを補完する目的で、23度と30度よりも高い温度で飼育する。また、室内行動実験の追加と野外調査を継続し、遺伝子解析のサンプル(地点)数をさらに増やしたい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] The effect of water depth on predation frequency by diving beetles on mosquito larvae prey.2015

    • 著者名/発表者名
      Ohba S, Ushio M.
    • 雑誌名

      Entomological Science

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 壱岐の水生半翅類・水生甲虫類2015

    • 著者名/発表者名
      大庭伸也
    • 雑誌名

      島の科学

      巻: 52 ページ: 1-26

  • [雑誌論文] 水田生態系に生息する水生昆虫類の生態と保全2015

    • 著者名/発表者名
      大庭伸也
    • 雑誌名

      農業および園芸

      巻: 90 ページ: 243-255

  • [雑誌論文] Gonad development and sperm motility of diving beetle Cybister brevis Aube, 1838 (Coleoptera: Dytiscidae) in response to seasonal changes in Japan2014

    • 著者名/発表者名
      Inoda T, Ohba S, Rullan JK.
    • 雑誌名

      Aquatic Insects

      巻: 35 ページ: 39-45

    • DOI

      10.1080/01650424.2014.968172

    • 査読あり
  • [学会発表] 大型ゲンゴロウ類における生活史と行動形質の比較2015

    • 著者名/発表者名
      大庭伸也・高田 尚・中島かりん・村上 陵
    • 学会等名
      第59回日本応用動物昆虫学会大会
    • 発表場所
      山形大学(山形市)
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-28
  • [学会発表] 学校プールの水生昆虫類とそれを利用した環境評価の試み2015

    • 著者名/発表者名
      村上 陵・大庭伸也
    • 学会等名
      長崎県生物学会第44回大会
    • 発表場所
      長崎大学(長崎市)
    • 年月日
      2015-01-11 – 2015-01-11
  • [学会発表] 大型ゲンゴロウ類における移動分散能力および集団遺伝構造の比較2015

    • 著者名/発表者名
      中島かりん・大庭伸也
    • 学会等名
      長崎県生物学会第44回大会
    • 発表場所
      長崎大学(長崎市)
    • 年月日
      2015-01-11 – 2015-01-11
  • [学会発表] 大型ゲンゴロウ類における生活史・行動形質の比較2015

    • 著者名/発表者名
      高田尚・大庭伸也
    • 学会等名
      長崎県生物学会第44回大会
    • 発表場所
      長崎大学(長崎市)
    • 年月日
      2015-01-11 – 2015-01-11
  • [学会発表] 東北地方津波被災跡地の湿地および水溜りから発生する水生昆虫類2014

    • 著者名/発表者名
      大庭伸也・津田良夫
    • 学会等名
      第26回日本環境動物昆虫学会
    • 発表場所
      長崎大学(長崎市)
    • 年月日
      2014-11-29 – 2014-11-30
  • [図書] Ecology, Systematics, and the Natural History of Predaceous Diving Beetles (Coleoptera: Dytiscidae) (Yee DA ed),2014

    • 著者名/発表者名
      Culler LE, Ohba S, Crumrine P
    • 総ページ数
      24
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2016-06-01  

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