研究課題
若手研究(B)
本研究の主目的は二つある。一つは、我が国の水田における主要な農業活動(集約農業、保全型農業、耕作放棄)が生物多様性に与える影響を、空間解析を用いて広域(景観~全国)スケールで明らかにすること。本年度は、(1)既存文献のレビューを実施し、日本での現状と今後の課題を整理した(総説論文として国際誌に投稿中)。(2)景観スケールでの野外調査およびデータ解析を進めた。具体的には、関東地方の水田スペシャリスト鳥類(サギ類、シギチ類など)の種数・個体数に対して、集約的農業・耕作放棄が負の影響をもたらすことを解明した。また、水田の代表種であるシラサギ(ダイサギ・チュウサギ)の採食行動を調査し、慣行農法よりも環境保全型農法の水田で採食効率(短時間あたりの獲得食物重量)が高いことを明らかにした(国際誌に投稿準備中)。(3)全国スケールの陸生鳥類の種数・個体数と景観構造の関係を明らかにした。特に里山などの土地利用のモザイク性が大きく影響することを明らかにした(国際誌に発表済み)。もう一つの目的は、農業生産性(収量など)と生物多様性のトレードオフ関係を定量化することで、その両立を可能にする農業活動の在り方を明らかにすることである。本年度は、関東地方において水田生物(鳥類、カエル類、魚類など)の野外調査に加え、農家への聞き取り調査によって農法や収量のデータを収集した。これらのデータを複数年継続して取得し、解析することで、トレードオフ関係について頑健な関係性を推定することができる。また、その結果をもとにLand sharing/sparingの枠組みのなかでの農業の在り方について議論することが期待できる。
2: おおむね順調に進展している
上記の目的達成に対して、初年度としては十分に研究が進捗している。課題実行に向けて大きな障害となる事項は現時点で存在せず、研究終了時には期待通りの成果を挙げることができると考えている。
今年度以降は、得られた成果を迅速に国内外の学術誌に投稿することで成果を還元しながら、データ収集を継続することでより大きな成果を挙げることを目指す。特に農業生産性と生物多様性のトレードオフ解析については、生態学だけでなく農業土木や農業経済学の観点から、実現可能な対策の提言を目指す。
平成25年度の段階でArcGIS・SpatialAnalyst(セット)を購入する必要性がなくなり、また野外調査に関わる費用も当初予定より少なく済んだため、次年度使用額が生じた。平成26年度以降は、野外調査のための費用が大きく増加する見込みである。それにともない、野外調査およびデータ入力のための補助者、また野外調査に関わる旅費やその他経費を中心に使用する予定である。
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PLOS ONE
巻: 9 ページ: e93359
10.1371/journal.pone.0093359