酸化ストレスからのゲノムDNA保護は、細胞生命の維持によって重要である。申請者は、細菌の核様体(染色体)タンパク質の網羅的解析から、様々な核様体タンパク質が、核様体に局在することを見出した。本研究では、酸化ストレス消去タンパク質がゲノムDNA上に局在し、活性酸素種の無効化や発生阻止によって、ゲノムDNAを保護するという仮説を検証する。平成26年度は、核様体タンパク質の一つである黄色ブドウ球菌MrgAの、DNA結合・核様体凝集能力および活性酸素種(ヒドロキシラジカル)産生阻止能力に着目し、これらの機能とゲノムDNA保護の関係を明確にすることを目的とした。まず、MrgAがDNA保護能を持ち、菌の酸化ストレス体制に寄与していることを確認した。次に、ヒドロキシラジカル産生を阻止するフェロドキシダーゼ活性を弱めた変異タンパク質および変異株を作成し、ゲノム保護および黄色ブドウ球菌酸化ストレス耐性能を調べたところ、変異タンパク質はDNA結合・核様体凝集能力は維持するものの、酸化ストレスに対するゲノムDNA保護能力は失われ、菌の酸化ストレス体制能がMrgA欠損株と同レベルまで低下することが明らかとなった。この結果は、MrgAのゲノムDNA上に局在し、ヒドロキシラジカルを消去することでDNAを保護するという仮説を支持するものである。 さらに、マイクロアレイ解析から、MrgAによる凝集によって、ゲノムDNA上の遺伝子発現パターンが変化することを見出しており、MrgAのゲノム上への局在が、直接的なDNA保護のみではないことを見出しつつある。
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