研究課題/領域番号 |
25840008
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平野 泰弘 大阪大学, 生命機能研究科, 特任助教 (10508641)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 核膜 / ラミンB受容体 / 分化 / 転写制御 |
研究概要 |
細胞は数万の遺伝子の中から細胞周期や分化過程に応じて必要な遺伝子のみを正確に取り出し、厳密にその転写を制御している。このような厳密な転写制御には核内構造体が関与する。本研究では核膜内膜特異的タンパク質であるラミンB受容体(LBR)に着目し、LBRの転写制御メカニズムの解明を通して、核膜による転写制御のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 昨年度は、HeLa細胞・HL60細胞を用いてLBRが結合する染色体部位の網羅的同定を、クロマチン免疫沈降と次世代シーケンシングにより行った。その結果、LBRはヘテロクロマチンと呼ばれる染色体領域に主に結合すること、HeLa細胞では特定の染色体末端領域に結合すること、HL60細胞ではHeLa細胞で見られた特定の染色体末端への結合が見られなくなることなどがわかった。この結果は異なる細胞種への分化の過程で細胞核内の染色体配置が大きく変化したことを示唆している。また、LBRの発現を約90%恒常的に抑えたHeLa細胞株を作成し、それによって影響を受ける遺伝子群をマイクロアレイ法によって検討したところ、600種を超える遺伝子群の発現が2倍以上変動していることがわかった。現在これらの遺伝子群がどのような生物学的な意義を持っているかについて解析を進めている。昨年度で得たこれらの結果を詳細に解析することで、核膜直下においてLBRに直接的に転写制御される遺伝子群を同定でき、これらが細胞分化に与える影響を明らかにするための基礎的なデータとなることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はHL60細胞、HeLa細胞についてLBRが関与する転写調節機構を明らかにすることを主な目的としていた。実験はほぼ計画通り進み、マイクロアレイによるLBRが制御する遺伝子群の解析・ChIP-seqによるLBRが結合する染色体部位の同定のための実験を行った。現在これらの結果からLBRによる転写調節機構の詳細なメカニズムを解析中である。一方、HL60細胞のLBRのノックダウン細胞の作製が一般的なリポフェクション法では困難であったため、エレクトロポレーション法やウイルスベクターを用いたトランスフェクション法を検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度の解析から得られた情報を精査し、LBRによる転写制御メカニズムの解析を進める。また、細胞分化とLBRの転写制御の関連を明らかにするための細胞株の作成、イメージングシステムの検討を行い、システム構築が終了し次第、解析を開始する予定である。 一方、昨年度作成が出来なかったHL60細胞でのLBRノックダウン細胞株の作成を多方面から進め、遺伝子発現解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次世代シーケンサーを用いた解析を共同研究で行うこととなったが、昨年度内で終了せず、次年度も引き続き行うことになったため。 繰り越した助成金は、今年度も引き続き次世代シーケンサーによる網羅的解析を進めるための消耗品費として使用する。今年度請求した助成金は当初の計画の通り使用する。
|