これまでに構造解析に成功したMdm12は、他のERMES構成因子であるMmm1と複合体を形成し、単独の場合よりも効率よくリン脂質輸送を行うことを見出した。一方で、Mdm12-Mmm1複合体において両タンパク質がどのように機能しているのか、つまり個々のタンパク質の役割は明らかになっておらず、Mdm12-Mmm1複合体によるリン脂質輸送の分子メカニズムは不明な点が多かった。そこで本年度の研究では、Mdm12-Mmm1複合体におけるそれぞれのタンパク質のリン脂質輸送反応への関与を明らかにすることを目的として研究を行った。 これまでの解析から、Mdm12とリン脂質の相互作用は、Mdm12の構造維持に必須であるため、変異体解析が進んでいない。一方、Mdm12とMmm1の可溶性ドメインは、配列上類似性が見出される(およそ37%のアミノ酸が類似)ことから、ホモロジーモデリングによりMmm1のモデル構造を構築することが可能であると考えた。そして、Mdm12の結晶構造を参考に、Mmm1のリン脂質認識部位を推測し、疎水性アミノ酸を親水性のセリンに置換した変異体を作成した。このようにして作成したMmm1の野生型および変異体を、Mmm1単独およびMdm12との複合体として調製し、リポソームを用いたin vitroリン脂質輸送アッセイを行った。その結果、Mmm1単独は、マルトース結合タンパク質との融合タンパク質であるにもかかわらずMdm12よりも高いリン脂質輸送活性を示し、さらに作成した変異体のいくつかにおいて輸送能の低下が見られた。 以上の結果よりMmm1は、Mdm12との複合体を形成することで、リン脂質輸送の少なくとも一部を担っていることが強く示唆された。
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