研究実績の概要 |
平成26年度においては、まずGroEL-ES複合体について、PheおよびMet残基由来のシグナルを帰属するため、一塩基置換変異体の作製を進めた。これにより、Metε位の13C, 1Hシグナルの帰属を進める事が出来た。興味深い点として、315番目のMet残基(M315)と542番目のMet残基(M542)は、GroEL-ES複合体において、それぞれが2つのNMRシグナルを示している事が明らかとなった。これはM315とM542が、GroEL-ES複合体において異なる2つの状態を呈していることを示している。これまでに、GroEL-ES複合体の結晶構造が明らかにされており、M315はGroESとGroELとの相互作用界面に、M542はGroELのC末端領域に存在しており、GroEL14量体の相互作用面に存在している。結晶構造からは、両Met残基について異なる状態を示す知見は得られておらず、GroEL-ES複合体において、機能発現に関わる動態解明に近づくと期待された。温度可変実験等を進め、シグナル変化の解析を試みたが、交換速度の解明には至らなかった。今後、圧力変化の解析などを検討する。また、Met残基のみならず、Ile, Val, Leu等のメチル基のシグナル解析についても最適化を進め、GroEL-ES複合体の動態解明を目指す。 一方、芳香族アミノ酸についても、13C-1HシグナルがGroEL-ES複合体においても、培養条件や、安定同位体標識法を最適化することにより、高感度に観測できることが明らかとなった。特に、Tyr残基の芳香環CHシグナルはアミノ酸置換法により、一義的に帰属する事が出来た。
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