研究課題
若手研究(B)
モヤモヤ病は日本人に多い脳血管疾患で、内頸動脈分岐部での血管の狭窄・閉塞、および側副血行路の形成と出血を特徴とする。モヤモヤ病患者の遺伝解析から、新規遺伝子ミステリンのミスセンス変異が、モヤモヤ病罹患リスクを著しく上昇させることが分かっていたが、ミステリンの生理機能、およびミスセンス変異がどのような分子・細胞レベルでの影響を及ぼすことで罹患につながっているのかについて、不明のままであった。そこで、我々はミステリンの分子・細胞レベルでの解析を行い、ミステリンが2つのAAA+ ATPアーゼモジュールを持つ新規タンデム型AAA+ ATPアーゼであることを明らかにした。ミステリンは2つのAAA+モジュールを介して、巨大なドーナツ状複合体を形成し、ATP結合・加水分解と共役して複合体状態を変化させていた。ミステリンは細胞内において、ATP加水分解エネルギーを用いた物理的な仕事をしていることが強く示唆された。また、ミステリンは細胞内において広く細胞質に分布しているが、一部は何らかの細胞内構造と結合していることが明らかとなった。ミステリンは秒オーダーでこの構造と結合・解離を繰り返していた。現在、この構造の同定と、ミステリンが細胞内の特定の領域でどのような機能を担っているのかについて、各種ATPアーゼ変異体、ユビキチンリガーゼ変異体、疾患変異体、GFP融合体等を用いて、細胞生物学的解析を継続している。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定にない精製を行うため、予定外の日数がかかってはいるが、研究全体の進捗としてはすでに研究計画の一部を完了して論文として発表するにいたり、おおむね順調に進展しているといえる。
ミステリンのAAA+ ATPアーゼとしての性質は複雑なものであり、ATP結合・加水分解および複合体形成に異常のある各種変異体を用いて、ミステリンの酵素活性と細胞内機能がどのようにリンクしているのか、詳細な検討を進める。
ミステリンの構造解析のため、大腸菌、昆虫細胞を用いたタンパク質精製に取り組んだが、十分な量の精製標品は得られなかった。そこで代替手段として、当初の予定に含まれなかったほ乳類浮遊培養細胞系による精製をスタートした。このため予定外の日数がかかっており、次年度引き続き精製を行う必要がある。よって、当初予定していた大腸菌、昆虫細胞を用いたタンパク質精製に必要な消耗品費等を繰越した。ほ乳類浮遊培養細胞系に必要な培養試薬・血清等や、培養に必要な機器等の購入、および成果発表・研究打ち合わせのための旅費等に用いたい。
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