ミステリンは脳血管疾患モヤモヤ病の遺伝解析により見つかった新規タンパク質である。家族性および一部の孤発性モヤモヤ病患者においては17番染色体に稀なミスセンスSNPが認められるが、これによりミステリンC末端付近のアルギニンがリジンに置換され、モヤモヤ病の発症率が約100~200倍程度上昇する。ミステリン遺伝子にはAAA+ドメインとユビキチンリガーゼドメインを含む巨大(591 KDa)なタンパク質がコードされていた。これら2つの酵素ドメインを持つタンパク質は、知られてる中ではミステリンのみであり、その巨大さと併せて非常に特徴的な因子であると言える。これまで全長ミステリンタンパク質の精製に成功し、精製標品が通常のAAA+タンパク質と同様、ドーナツ状オリゴマーを形成して、動的に構造を変化させることを観察してきた。一方で、ミステリンのATPアーゼ活性およびユビキチンリガーゼ活性の生理的意義については明確でなかった。今回、ゼブラフィッシュにおいてミステリンの発現抑制を行うことで、ミステリンが血管・神経・筋肉の正常発生に必須の因子であることを明らかにすると共に、野生型・変異型ミステリンを用いたレスキュー実験により、2つの酵素活性(ATPアーゼ活性・ユビキチンリガーゼ活性)の両方が、ミステリンの神経・筋肉における生理機能に必須であることを明らかにし、これら酵素活性が生理的に重要であることを初めて示すことが出来た。
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