ヘムオキシゲナーゼと弱い相互作用を示す複合体の立体構造解析

2015 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 25840026
• 研究機関: 久留米大学
• 研究代表者: 杉島 正一 久留米大学, 医学部, 准教授 (30379292)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: X線結晶構造解析 / 電子移動 / 酸化還元複合体

研究実績の概要

[背景]ヘムオキシゲナーゼ（HO）は分子状酸素とNADPH-シトクロムP450還元酵素（CPR）からの還元力を利用し、3 段階の酸素添加反応によってヘムを部位特異的に開裂し、ビリベルジン、鉄、一酸化炭素に分解する酵素である。これらの生成物は体内の鉄の恒常性維持、抗酸化作用、種々のシグナル伝達に関わり、HOは生理的に重要な酵素と言える。
これまでに、HOの反応機構を解明するために、種々の構造生物学的研究（様々な反応中間状態のX線結晶構造解析や分光学的解析、量子化学計算による解析など）が行われてきた。しかし、CPRからHOへどのように還元力が受け渡されるのかについては、CPR-HO複合体の立体構造が不明であったこともあり、なかなか理解が進んでいなかった。
本研究では構造生物学を基盤としたHOの機能研究をさらに進めるべく、HOとCPRとの相互作用に着目して研究を進めた。CPRはHO以外にシトクロムP450やシトクロムb5と相互作用し、電子を受け渡す。したがって、本研究の成果はCPRから他のタンパク質への電子移動機構の解明についても波及することが期待される。
[研究結果]研究期間の前半において、HOとの相互作用を安定化させた変異CPR（ΔTGEE）を用いて、CPR-ヘム-HO複合体の結晶構造解析に成功し、CPRのダイナミックな構造変化を伴うHOへの電子移動機構を提唱することができた。研究期間の後半においては、ΔTGEEや別の変異CPRを用いたヘム-HO複合体との相互作用解析や機能解析を行い、提唱した電子移動機構と合致する結果を得ることができた。
今後は、CPR-ヘム-HO複合体の結晶構造解析の分解能向上（現在の分解能では電子移動反応に関わるであろう水分子などが全く見えていない）により、電子移動機構をより精密に解析していきたいと考えている。

備考

平成27年度日本生化学会奨励賞受賞

研究成果

• [雑誌論文] ヘム代謝系関連酵素の構造生物学的研究 (2016)
  • 著者名/発表者名: 杉島正一
  • 雑誌名: 生化学 巻: 88 ページ: 171-181
  • DOI: 10.14952/SEIKAGAKU.2016.880171
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] X線小角散乱によるNADPH-シトクロムP450還元酵素とヘムオキシゲナーゼの複合体の構造解析 (2016)
  • 著者名/発表者名: 杉島正一
  • 雑誌名: 九州シンクロトロン光研究センター年報 巻: 2014 ページ: 14-16
• [雑誌論文] Backbone assignments of the apo and Zn(II) protoporphyrin IX-bound states of the soluble form of rat heme oxygenase-1 (2015)
  • 著者名/発表者名: Harada E., Sugishima M., Harada J., Noguchi M., Fukuyama K., Sugase K.
  • 雑誌名: Biomol. NMR Assign. 巻: 9 ページ: 197-200
  • DOI: 10.1007/s12104-014-9573-z
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Distal regulation of heme binding of heme oxygenase-1 mediated by conformational fluctuations (2015)
  • 著者名/発表者名: Harada E., Sugishima M., Harada J., Fukuyama K., Sugase K.
  • 雑誌名: Biochemistry 巻: 54 ページ: 340-348
  • DOI: 10.1021/bi5009694
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Insights into the proton transfer mechanism of a bilin reductase PcyA following neutron crystallography (2015)
  • 著者名/発表者名: Unno M., Ishikawa-Suto K., Kusaka K., Tamada T., Hagiwara Y., Sugishima M., Wada K., Yamada T., Tomoyori K., Hosoya T., Tanaka I., Niimura N., Kuroki R., Inaka K., Ishihara M., Fukuyama K.
  • 雑誌名: J. Am. Chem. Soc. 巻: 137 ページ: 5452-5460
  • DOI: 10.1021/jacs.5b00645
  • 査読あり
• [雑誌論文] Crystal structure of an associated form of NADPH-cytochrome P450 reductase with heme oxygenase (2015)
  • 著者名/発表者名: Sugishima M., Fukuyama K., Noguchi M.
  • 雑誌名: SPring-8 Research Frontiers 巻: 2014 ページ: 18-19
• [雑誌論文] 中性子結晶構造解析で明らかになったビリン還元酵素PcyA基質複合体の二つの水素化状態と構造的特徴 (2015)
  • 著者名/発表者名: 海野昌喜、杉島正一、和田啓、萩原義徳、日下勝弘、玉田太郎、福山恵一
  • 雑誌名: 日本結晶学会誌 巻: 57 ページ: 297-303
  • DOI: 10.5940/jcrsj.57.297
  • 査読あり
• [雑誌論文] 光合成色素フィコシアノビリンを合成する酵素と基質ビリベルジンとの複合体の中性子結晶解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 福山恵一、和田啓、杉島正一、海野昌喜
  • 雑誌名: 生化学 巻: 87 ページ: 753-757
  • DOI: 10.14952/SEIKAGAKU.2015.870753
  • 査読あり
• [学会発表] 中性子結晶構造解析に向けたビリン還元酵素PcyA変異体I86Dの大型結晶作製条件の探索 (2016)
  • 著者名/発表者名: 五十嵐啓介、杉島正一、和田 啓、福山恵一、海野昌喜
  • 学会等名: 2015年度量子ビームサイエンスフェスタ
  • 発表場所: エポカルつくば（茨城県つくば市）
  • 年月日: 2016-03-15 – 2016-03-15
• [学会発表] icrofluidic-based Approach for Producing Diffraction Quality Protein Crystals (2016)
  • 著者名/発表者名: Maeki M, Pawate A S, Sugishima M, Watanabe K, Tokeshi M, Kenis P J A, Miyazaki M
  • 学会等名: PITTCON Conference & Expo 2016
  • 発表場所: Atlanta(USA）
  • 年月日: 2016-03-06 – 2016-03-10
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Simple Method for the Preparation of High Diffraction Quality Protein Crystals Using Microfluidic Device (2015)
  • 著者名/発表者名: Maeki M, Pawate A S, Sugishima M, Watanabe K, Tokeshi M, Kenis P J A, Miyazaki M
  • 学会等名: Pacifichem 2015
  • 発表場所: Honolulu(USA)
  • 年月日: 2015-12-15 – 2015-12-20
  • 国際学会
• [学会発表] ヘム代謝系関連酵素の構造生物学的研究 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉島正一
  • 学会等名: 第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会合同大会
  • 発表場所: 神戸国際会議場（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
  • 招待講演
• [学会発表] ヒドロキシメチルビランシンターゼ-阻害剤複合体の結晶構造解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 佐藤秀明、杉島正一、塚口 舞、増子隆博、小俣義明、和田 啓、久枝良雄、山本 健、野口正人
  • 学会等名: 第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会合同大会
  • 発表場所: 神戸国際会議場（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] シアノバクテリア由来ビリベルジン還元酵素-基質複合体の結晶構造解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 高尾春奈、平林 佳、渡邉 彩、萩原義徳、原田二朗、榊原陽一、水光正仁、福山恵一、杉島正一、和田 啓
  • 学会等名: 第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会合同大会
  • 発表場所: 神戸国際会議場（兵庫県神戸市）
  • 年月日: 2015-12-01 – 2015-12-04
• [学会発表] シアノバクテリア由来ビリベルジン還元酵素の結晶構造解析に基づいた反応機構 (2015)
  • 著者名/発表者名: 高尾春奈, 平林 佳, 萩原義徳, 原田二朗, 福山恵一, 杉島正一, 和田 啓
  • 学会等名: ユーグレナ研究会 第31回研究集会
  • 発表場所: Kitenビル コンベンションホール（宮崎県宮崎市）
  • 年月日: 2015-11-07 – 2015-11-07
• [学会発表] 大きな構造変化を伴うシトクロム P450 還元酵素からヘムオキシゲナーゼへの電子伝達機構 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉島正一、平 順一、佐藤秀明、野口正人、山本 健、坂本 寛
  • 学会等名: 平成27年度 日本結晶学会年会
  • 発表場所: 大阪府立大学（大阪府堺市）
  • 年月日: 2015-10-17 – 2015-10-18
• [学会発表] Development of Microfluidic Device for Protein Crystallization and Its Application for X-ray Analysis (2015)
  • 著者名/発表者名: Maeki M, Pawate A S, Sugishima M, Watanabe K, Tokeshi M, Kenis P J A, Miyazaki M
  • 学会等名: 6th Japan-Korea-China Joint Conference on MEMS/NEMS 2015
  • 発表場所: Xi’an(China）
  • 年月日: 2015-09-24 – 2015-09-24
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] ヒト由来ペプチドアミド化酵素 PAM に対する癌代謝物の阻害効果 (2015)
  • 著者名/発表者名: 下川千寿、城田(原田)沙織、佐藤秀明、杉島正一、原田二朗、東元祐一郎、Amzel LM、野口正人
  • 学会等名: 第9回バイオ関連化学シンポジウム
  • 発表場所: 熊本大学（熊本県熊本市）
  • 年月日: 2015-09-10 – 2015-09-12
• [学会発表] 変異NADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)を用いたCPRからヘムオキシゲナーゼへの電子伝達機構の検討 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉島正一、平 順一、佐藤秀明、野口正人、山本 健、坂本 寛
  • 学会等名: 第39回蛋白質と酵素の構造機能に関する九州シンポジウム
  • 発表場所: 豊泉荘（大分県別府市）
  • 年月日: 2015-09-10 – 2015-09-12
• [学会発表] 基質類似体を結合したヒドロキシメチルビラン合成酵素の結晶構造解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 佐藤秀明、杉島正一、塚口 舞、増子隆博、小俣義明、和田 啓、久枝良雄、山本 健、野口正人
  • 学会等名: 第9回バイオ関連化学シンポジウム
  • 発表場所: 熊本大学（熊本県熊本市）
  • 年月日: 2015-09-10 – 2015-09-12
• [学会発表] An Approach for Controlling Epitaxial Growth of Protein Crystal by Using Microfluidic Device (2015)
  • 著者名/発表者名: Maeki M, Pawate A S, Sugishima M, Watanabe K, Tokeshi M, Kenis P J A, Miyazaki M
  • 学会等名: Fifth European Conference on Crystal Growth (ECCG 5)
  • 発表場所: Bologna(Italy)
  • 年月日: 2015-09-09 – 2015-09-11
  • 国際学会
• [学会発表] 打撲後のあざの色調変化に隠されたメカニズム ～ヘム分解酵素の立体構造と反応機構～ (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉島正一
  • 学会等名: 九州大学先導物質化学研究所・九州シンクロトロン光研究センター合同シンポジウム - 物質化学が導く材料創生とシンクロトロン放射光が解く構造・機能のコラボレーション -
  • 発表場所: サンメッセ鳥栖（佐賀県鳥栖市）
  • 年月日: 2015-08-28 – 2015-08-28
  • 招待講演
• [学会発表] シトクロムP450還元酵素の大きな構造変化を伴うヘムオキシゲナーゼへの電子伝達機構 (2015)
  • 著者名/発表者名: 杉島正一
  • 学会等名: 大阪大学蛋白質研究所セミナー「生体超分子構造解析ビームライン利用報告会」
  • 発表場所: 大阪大学（大阪府吹田市）
  • 年月日: 2015-08-27 – 2015-08-28
  • 招待講演
• [学会発表] NADP+結合型シアノバクテリア由来ビリベルジン還元酵素の結晶構造 (2015)
  • 著者名/発表者名: 高尾春奈、平林 佳、渡邉 彩、萩原義徳、原田二朗、榊原陽一、水光正仁、福山恵一、杉島正一、和田 啓
  • 学会等名: 第15回日本蛋白質科学会年会
  • 発表場所: あわぎんホール（徳島県徳島市）
  • 年月日: 2015-06-24 – 2015-06-26
• [学会発表] 中性子で見えてきたビリン還元酵素 PcyA の構造的特徴 (2015)
  • 著者名/発表者名: 海野昌喜、須藤久美子、日下勝弘、玉田太郎、萩原義徳、杉島正一、和田 啓、山田太郎、石原真樹子、福山恵一
  • 学会等名: 第15回日本蛋白質科学会年会
  • 発表場所: あわぎんホール（徳島県徳島市）
  • 年月日: 2015-06-24 – 2015-06-26
  • 招待講演
• [学会発表] An Inhibitory Effect of a Porphobilinogen Derivative on Hydroxymethylbilane Synthase and the Crystal Structure of the Enzyme-Inhibitor Complex (2015)
  • 著者名/発表者名: Sato H, Sugishima M, Tsukaguchi M, Masuko T, Omata Y, Wada K, Hisaeda Y, Noguchi M, Yamamoto K
  • 学会等名: RIKEN Symposium series: "Metals in Biology" in Wako
  • 発表場所: 理化学研究所（埼玉県和光市）
  • 年月日: 2015-06-16 – 2015-06-17
  • 国際学会
• [学会発表] Mechanism for the electron transfer from P450 reductase to heme oxygenase (2015)
  • 著者名/発表者名: Sugishima M, Sato H, Taira J, Sakamoto H, Higashimoto Y, Harada J, Yamamoto K, Noguchi M
  • 学会等名: RIKEN Symposium series: "Metals in Biology" in Wako
  • 発表場所: 理化学研究所（埼玉県和光市）
  • 年月日: 2015-06-16 – 2015-06-17
  • 国際学会
• [学会発表] Inhibition of Human Peptidylglycine α-Amidating Monooxygenase (2015)
  • 著者名/発表者名: Shimokawa C, Shirota-Harada S, Sato H, Sugishima M, Harada J, Higashimoto Y, Amzel LM, Noguchi M
  • 学会等名: RIKEN Symposium series: "Metals in Biology" in Wako
  • 発表場所: 理化学研究所（埼玉県和光市）
  • 年月日: 2015-06-16 – 2015-06-17
  • 国際学会
• [学会発表] Inhibitory Effect of a Novel Porphobilinogen Analog on the Synthesis of a Heme Precursor by Hydroxymethylbilane Synthase (2015)
  • 著者名/発表者名: Sato H, Sugishima M, Tsukaguchi M, Masuko T, Omata Y, Wada K, Hisaeda Y, Noguchi M, Yamamoto K
  • 学会等名: 19th International Conference on Cytochrome P450 (ICCP450 Tokyo 2015)
  • 発表場所: 国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区）
  • 年月日: 2015-06-12 – 2015-06-15
  • 国際学会
• [学会発表] Protein Crystal Growth in Confined Space of Microfluidic Device (2015)
  • 著者名/発表者名: Maeki M, Pawate A S, Sugishima M, Watanabe K, Tokeshi M, Kenis P J A, Miyazaki M
  • 学会等名: International Symposium on Microchemistry and Microsystems (ISMM2015)
  • 発表場所: 京都大学(京都府京都市）
  • 年月日: 2015-06-08 – 2015-06-10
  • 国際学会
• [学会発表] ヒドロキシメチルビランシンターゼに対する2-ヨードポルホビリノーゲンの阻害効果と複合体の立体構造の解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 佐藤秀明、塚口 舞、杉島正一、増子隆博、小俣義明、和田 啓、久枝良雄、山本 健、野口正人
  • 学会等名: 平成27年度日本生化学会九州支部例会
  • 発表場所: 九州大学（福岡県福岡市）
  • 年月日: 2015-05-16 – 2015-05-17
• [備考] 個人のホームページ
  • URL: https://sites.google.com/site/msugishima76/