酵母Type II NADH脱水素酵素(NDH-2)構造解析は我々のグループと中国のグループから報告されているが、両報告におけるのユビキノン結合位置は異なっており、ユビキノンの生理的な結合部位は未だ明らかとなっていない。そこで本年度(平成26年度)はNDH-2のより詳細な反応機構とその構造的基盤を理解するため、「ユビキノン結合部位」および「FADからユビキノンへの電子伝達反応機構」を構造生物学的および生化学的手法を用いて解析した。 具体的には、まずユビキノン還元部位を標的とした阻害剤のライブラリーからNDH-2に対して強い阻害活性をもつ化合物を探索しユビキノンに対する阻害様式を試みた。その結果、これまでに見つかっているNDH-2阻害剤とは全く異なる構造を持ち非常に低濃度で作用する阻害剤を数種類見出した。ほとんどの阻害剤は基質であるユビキノンに対して混合阻害を示したが、拮抗阻害を示す化合物A(未発表のため名前は伏せる)を見出した。他の種のNDH-2を含めユビキノンに拮抗阻害を示す化合物が見つかったのは今回が初めてである。ユビキノンに対して阻害様式の異なる数種の阻害剤のタンパク質における結合位置が同定できれば、本来のユビキノンの結合部位が決定できることから、見出された阻害剤とNDH-2との共結晶構造解析を東京大学医学部の北潔教授、稲岡健ダニエル助教との共同研究により行った。現在、数種類の阻害剤との共結晶が得られており、タンパク質との相互作用を分子レベルで解析している。
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