ユビキチン化は、ユビキチンタンパク質の共有結合による翻訳後修飾であり、プロテアソームによるタンパク質分解の目印となる。核内ユビキチン‐プロテアソーム系は、転写因子など短寿命の核タンパク質を分解することで様々な生体機構を制御することが知られているが、その標的分子に関する包括的な情報はこれまで乏しかった。本研究では、プロテアソームサブユニットのうちRpt2のみにみられる脂質修飾 (N-ミリストイル化)が、細胞増殖期依存的なプロテアソームの核局在制御に関わるというこれまでの知見をもとに、修飾部位への変異導入酵母を用いたユビキチン化ペプチドのプロテオーム解析により、核内ユビキチン-プロテアソーム系の基質タンパク質の全貌と生理機能解明を目指した。 結果として、変異体では細胞内ユビキチン化ペプチドの総量と、ミスフォールドタンパク質の分解に関わるLys48結合型ポリユビキチン鎖の増加が確認された。また変異体では、核膜を通して核と細胞質を行き来すると考えられるタンパク質群に由来のユビキチン化ペプチドが顕著に蓄積していた。さらに変異体では、細胞質内のミスフォールドタンパク質を核内へ輸送し、基質と共に核内ユビキチン‐プロテアソーム系によって分解されることが知られる2つのHsp70ファミリー分子に由来のユビキチン化ペプチドが多く蓄積し、逆に基質タンパク質を核外輸送する別のHsp70ファミリー分子に由来のユビキチン化ペプチドが減少しており、このうち一つのタンパク質については免疫沈降‐免疫ブロット解析によるユビキチン化レベルの確認も行った。これらの結果は、N-ミリストイル化がプロテアソームの核局在制御を介して、核‐細胞質間を行き来するタンパク質群の分解を制御する可能性を示している。現在、本結果の論文投稿準備とともに、プロテアソームの局在様式が酵母と異なるヒト培養細胞を用いて、同様の解析を進めている。
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