アルツハイマー病はアミロイドβ前駆体タンパク質(APP)がβ部位およびγ部位で切断されることによって生じるアミロイドβペプチド(Aβ)が脳実質に過剰に蓄積することが発症の引き金となっている。前年度までの研究結果から、APPのO―結合型糖鎖付加がアルツハイマー病発症原因の一つであるAβ産生を左右していることがわかってきた。そこで、今年度はAPPのO―結合型糖鎖付加が細胞内において、いつ・どこで起きているのか、さらに糖鎖修飾の有無とAβ産生経路がどのような関係を持つのかを明らかにするため、可視化イメージング観察を目的とした、細胞染色ツールの作製と条件検討を行っている。25年度では、APPの O―結合型糖鎖修飾の機序をClickケミストリーの手法を用い生化学的に証明することに成功した。26年度はそこからさらに発展し、超解像顕微鏡(STED)とHaloシステムという新しい技術を取り入れることにより、細胞膜移行後のAPPを可視化標識し、細胞内での動態を追うことに成功している。また、APPの代謝とO-結合型糖鎖付加に深い関わりがあることがわかってきたので、25年度ではAPPにO―結合型糖鎖を付加する糖転移酵素の探索を行い絞り込むところまで進んでいたが、26年度はその結果を元にそれら糖転移酵素の改変を行うことによりAPP代謝への影響を追い、結果を得ている。 27年度では25年度、26年度の結果を発展させ、ClickケミストリーとHaloを用いた手法ではO-結合型糖鎖修飾されたAPPのみを可視化することに成功しており、O-結合型糖鎖修飾されたAPPとされていないAPPでは細胞内での挙動が異なっていることを視覚的に観察することに成功している。また、糖転移酵素の改変を行うことによりAβの産生量が変化することも確認できている。
|