研究課題
若手研究(B)
細菌べん毛モーターは直径約50 nmの超分子回転ナノマシンであり,イオン流をエネルギー源として駆動する.モーターはらせん状のべん毛フィラメントをスクリューのように回転させて細菌遊泳の原動力を生み出す.大腸菌べん毛モーターは,走化性関連タンパク質CheYの結合解離によって時計回り・反時計回りと回転方向の切り替えをおこなっている.また,モーターの回転速度についても外環境に応じて制御されることが知られており,YcgRやH-NSなどの因子がモーター本体に直接結合することによる速度変化が着目されている.一方,ロドバクターや海洋ビブリオ菌などの細菌がもつべん毛モーターは,CheYが結合することでモーター回転の停止や速度調節がされる.本研究では,べん毛モーターの様々な回転制御様式について,発生トルクが変化する様子を直接的に観察し,その制御機構を分子レベルで明らかにすることを目的として,本年度は以下の2点について研究を遂行した.1.モーターの速度制御機構.ビブリオ菌側べん毛モーターはCheYの結合によってモーター回転速度が低下するが,機能解析の難しさから分子レベルの理解には至っていない.そこで,回転計測系が確立している大腸菌内に,ビブリオ菌モーターを構成する素子群を発現・機能するようなキメラモーターの作製を試みている.2.入力エネルギーに依存したモーター制御.大腸菌のべん毛モーターは水素イオン流をエネルギー源としているが,遺伝子改変によりナトリウムイオン流を利用できる構成素子が報告されている.そこで,両素子を同時に作用させたところ,それらは協同的に機能することが明らかとなった.また,外環境のイオン濃度(エネルギー源)に依存してモーター素子の数を制御することで出力を最適化していることが明らかとなった.
2: おおむね順調に進展している
ビブリオ菌モーターの大腸菌内再構成については少し遅れがみられるものの,モーター回転機能解析に関しては論文として成果報告ができるなど,全体としてはおおむね順調と考えられるため.
ビブリオ菌モーターの大腸菌内再構成を試みるとともに,他の回転速度制御因子の機能解析や回転制御方法の開発へと研究を展開する.
遺伝子改変と機能解析を並行して遂行する計画であったが,機能解析の研究が予想以上に順調に進んだため,論文として報告することを優先するべきと判断した.そのため,遺伝子組換えの実験で計画していた物品費の使用額が計画よりも少なくなった.モーター制御因子のクローニングや蛍光タンパク質の融合などの実験材料の準備をするために遺伝子組換え実験に使用する計画である.
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
PNAS
巻: 111 ページ: 3436-3441
10.1073/pnas.1317741111
Biophys. J.
巻: 105 ページ: 2123-2129
10.1016/j.bpj.2013.09.043