本研究では、非侵襲な光による細胞機能制御を目指して、光刺激で開閉制御が可能なイオンチャネルを創製することを目的とした。そのため、K+チャネル(KcsA)の活性制御機構を解明し、その知見を活かして活性制御に重要な部位を光感受性ドメインや蛋白質に置換したキメラ変異体を作製することで、KcsAに光感受能を付与することを目標とした。 [最終年度に実施した研究の成果] 1. KcsAチャネルの不活性機構の解明: KcsAチャネルの活性制御に重要な細胞内領域の、刺激感受に伴う膜方向以外の微小な構造変化が、不活性化に関わっていることを解明した。 2. 光感受性蛋白質の付加によるKcsAチャネルの活性制御の改変:昨年度、KcsAチャネルに光感受性ドメイン(LOV)を付加したキメラ変異体では、それらを繋ぐリンカーの長さがチャネルの特性に影響を与えていることを明らかにした。本年度は、K+輸送欠損大腸菌を用いてリンカーの長さが違うキメラ変異体の活性を調べたところ、9アミノ酸残基以上のリンカーを持つ変異体は高い活性を有すること、また、35アミノ酸残基のリンカーを持つ変異体は青色光照射下と比べて暗所で高い活性を示すという光感受能を持つことがわかった。 [研究期間全体を通じて実施した研究の成果] 1. KcsAチャネルの活性制御機構の解明:KcsAチャネルのプロトン感受に重要なアミノ酸を同定し、そのアミノ酸のプロトン感受に伴う荷電状態の変化による微小な構造変化がチャネルの不活性化に影響を与えていることを明らかにした。2. KcsAチャネルとLOVのキメラ変異体の作製:KcsAチャネルの刺激感受部位をLOVに置換したキメラ変異体を約20種作製した。それらの活性測定から、KcsAとLOVを結ぶリンカーの長さが活性に影響を与えること、また35アミノ酸残基のリンカーを持つ変異体は光感受能を示すことを明らかにした。
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