シアノバクテリアの生物時計はKaiA、KaiB、KaiCの3つのタンパク質から構成されている。中でも、KaiCは中心振動体としての役割を担っており、振動中におけるKaiCの動的構造変化を明らかにすることはシアノバクテリア生物時計の分子機構の理解に重要だと言える。 KaiCは相同性の高い2つのリングが積み重なった構造をとる6量体のタンパク質である。我々は以前、KaiCが自身のATPase活性/リン酸化の状態に応じてC末端側のリングを開閉し、その構造変化を介してKaiA、KaiBとの相互作用のタイミングを計っていることを見出した。 一方、先行研究から時計機能におけるN末端側のリングの重要性が指摘されていたが、どのような構造変化をしているのかはよくわかっていなかった。本研究では、N末端側のリングの構造変化に注目し、その解明を目指した。 野生型KaiCでは、N末端側リングの構造変化を観測することができなかったため、N末端リングの特定の位置に蛍光プローブを挿入した変異体を構築した。蛍光プローブの挿入がKaiCの時計としての機能を損なわないように挿入位置を十分に検討し、野生型KaiCと同程度の時計機能を保持した変異体の構築に成功した。この変異体を用いて計測したところ、蛍光強度が周期的に変動することを突き止めた。このことは構築した変異N末端リングの構造変化を追跡する良いプローブであることを示している。またその強度変化は微弱であり、非常に繊細な構造変化であることを明らかにした。
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