研究課題
若手研究(B)
細胞内分解システムの一つであるオートファジーは、飢餓時等必要に応じて細胞内のオルガネラや蛋白質を分解し、生存維持に必須の新たな糧を生み出す。近年、このオートファジーが飢餓時の栄養源確保だけでは無く細胞内の有害成分(損傷ミトコンドリアなど)の除去により、神経変性疾患、発がん、心不全、炎症性疾患、感染症、生活習慣病など様々な疾患の抑制に働いていることが判明し大きな関心を呼んでいる。現象自身は50年前に発見されているが、関連因子が約20年前に申請者が学位を取得した研究室において酵母で単離されたことにより、その分子機構や生理的意義の理解が急速に進んだ。しかし、オートファジーを担う膜オルガネラのオートファゴソームがどのようにして形成されているのか、その詳細は不明のまま残されていた。オートファゴソームがどこから出来、どのようなオルガネラとのつながりがあるのか、初期形成サイトに的をしぼり解像度の高い電子顕微鏡観察により解析を行った。ポイントはただやみくもに細胞ないを観察するのではなく、XYZの情報がナノレベルで同定できる最新のCLEM法を用いることで、同定された箇所をさらに電子線トモグラフィー法をとりいれることで3次元情報を得るところにある。酵母でのオートファゴソーム形成初期構造体、動物細胞を用いたオートファゴソーム形成初期構造の両者を解析してきた。酵母ではこれまでわからなかった初期構造体が見えつつあり、また、動物細胞でも光顕でみられているような小胞体とミトコンドリアが多く存在するところで頻繁に形成が行われている事が確認できている。現在、それらの膜とオートファゴソームの膜が形成時にどのような関係にあるか解析中している。膜のつながりの詳細がわかればオートファゴソーム形成において非常に有益な情報となる。
2: おおむね順調に進展している
CLEMに関しては予定通りで酵母、動物細胞ともに初期構造体の観察が行えており、概ね順調に進展していると言える。光顕の3色同時観察も行って入るが、画像解析に時間がかかっている状態である。
引き続き観察を行い、論文として報告出来るレベルにまで持っていく予定である。電顕観察に時間がかなりかかるので、光顕の解析が遅れているのでそちらも進めることで、オートファゴソーム形成因子唯一の膜たんぱく質の動向から新たな形成モデルを立てられたらと考えている。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
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