細胞内大規模分解系であるオートファジーは、飢餓時の生存維持や、細胞内浄化による発がん、神経変性疾患、生活習慣病などの疾患発症の抑制など多岐に亘る機能を有し注目を集めている。オートファジーが誘導されると、細胞質で膜オルガネラであるオートファゴソーム(AP)が新規に形成される。細胞生物学の大きな謎であるAP膜の起源は長年論争が続いていたが、 我々は小胞体・ミトコンドリア接触場でAP膜が形成されていることを報告した(Nature 2013)。 AP膜の起源に迫るためには、次にAPの初期構造体が小胞体・ミトコンドリア接触場とどのような関係にあるか解明する必要がある。そこでAP 膜が形成される条件化での小胞体・ミトコンドリア接触場を解像度の高い電子顕微鏡観察により解析を行った。AP膜形成場に焦点を絞るため、XYZの情報がナノレベルで同定できる最新のCLEM法を用い、さらに電子線トモグラフィー法をとりいれ3次元に解析を行った。その結果、AP膜が形成されるのは、小胞体・ミトコンドリア接触場でも小胞体側でミトコンドリアと直接繋がることはなかった。AP膜の形成には脂質の形成場でもある小胞体の関与がより大きいことが明らかとなった。又、小胞体の形態を変化させた時のAP膜形成への影響も観察された。現在定量しており、結果をまとまり次第報告する準備にかかる。 AP膜形成初期過程の分子機構を解析するため、唯一の膜たんぱく質であるAtg9とのライブセルイメージングを行った。小胞体や他のAtgとの観察を経時的に行った結果、小胞体・ミトコンドリア接触場に初期形成因子が存在することが明らかになりつつある。こちらも統計処理や他のAtgとの関係を観察し報告する予定である。
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