核膜孔複合体の構成因子であるMlpタンパク質が細胞老化を引き起こす老化タンパク質の不均等分配に関与するメカニズムを明らかにするために、以下のような研究を行った。まずMlpタンパク質が酵母プリオン[PSI+]の原因タンパク質であるSup35タンパク質と結合することを免疫沈降によって確認した。また、タンパク質の凝集体のマーカーであるHsp104シャペロンやHsp40であるSis1とのとMlpの局在を調べたところ、これらの凝集体とMlp1Mlp2はおそらく核内側において共局在していることがわかりました。Hsp104およびSis1とMlp1との結合を免疫沈降によって調べたところ、ともにMlp1と結合していることがわかりました。これらの結果からMlp1とMlp2はHsp104やSis1の凝集体と結合・共局在していることがわかりました。 つぎにmlp1mlp2二重破壊株を作成し、Hsp104 凝集体の局在を調べました。Hsp104凝集体が母細胞と娘細胞のどちらに局在するか調べたところ、野生株ではほとんどが母細胞に局在しましたが、二重変異株では娘細胞での局在がみられました。また、二重変異株でプリオン凝集体の分配をしらべたところ、野生株でみられていた母細胞への不均等分配が失われることがわかりました。このことからMlp1/2はタンパク質凝集体やプリオン凝集体の不均等分配に必要であることがわかりました。 二重変異株で細胞の出芽回数、複製寿命を調べたところ、野生株や単独変異株に比べて二重変異株では顕著に短い複製寿命を示しました。また、二重変異株にHsp104を過剰発現させたところ寿命の低下は抑圧されました。このことは二重変異株では老化タンパク質の蓄積のリセットができず、寿命が低下していることを示唆しています。 以上から、Mlpタンパク質が老化タンパク凝集体と結合し、不均等分配に重要であることがわかった。
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