哺乳類Rif1タンパクはDNA複製の開始時期を制御する因子であり、またDNA損傷時の非相同末端結合の修復にも寄与している。昨年度から継続してRif1タンパクのクロマチン動態における機能解析を行った。核内の染色体構造維持に関与している因子(ラミン、コヒーシン複合体、コンデンシン複合体など)をsiRNA法で発現抑制し、DNA複製タイミングのプロファイル解析を行った。その結果、どの発現抑制細胞も野生型のプロファイルと類似しており、著しいタイミングドメインの変化は観察されなかった。この事は、タイミングドメインの制御は染色体の核内構造だけではない事を示している。 造血幹細胞でRif1欠損を誘導するマウスを作製して分化過程あるいは成熟した血球細胞でのRif1の機能解析を行った。Rif1欠損B細胞において、CSR( class switch recombination )に異常を示し IgG1の産生が減少した。この事実は2013年に報告された結果と一致している。更に転写解析から1 Mb に渡る巨大な遺伝子クラスター領域がRif1 欠損により活性化されることを見いだした。この領域内のDNAメチル化解析を行ったところ、野生型と比較して大きな変化は無かった。すなわち、DNAのメチル化制御以外のエビジェネティックな変化が転写の活性化を誘導したと考えられる。
|