研究課題/領域番号 |
25840083
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
武尾 里美 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10642100)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カルシニューリン / 減数分裂 / 卵活性化 / マウス |
研究概要 |
(A)マウス卵でのCN発現・機能解析: 本研究では、動物種により多様な減数分裂システムの分子機構の普遍性を解明することを目的として、ショウジョウバエの減数分裂再開・完了に必須であるカルシニューリン(CN)の発現と機能を、マウスを用いて解析した。 CN特異的阻害剤を含む培地でGV期卵を体外培養すると、卵核胞崩壊のタイミングがコントロールと比較して遅れることがわかった。一方、MII期卵を塩化ストロンチウムによって人工的に活性化させる実験では、CN阻害剤は減数分裂の進行に影響を与えなかった。しかし、野生型精子を用いて体外受精をおこなうと、CN阻害剤は卵子と精子の融合を阻害することが明らかとなった。これらの結果は、マウス卵においてもCNは発現しているが、ショウジョウバエとは異なり卵成熟や受精という局面ではたらく、という遺伝子の機能の多様化を示唆するものである。 (B)ショウジョウバエでのCNシグナル伝達経路の機能と調節機構の解析: これまでの研究で、Glycogen synthase kinase (GSK)-3betaが、CNの調節因子であるSraをリン酸化することで、卵活性化におけるCN活性化に重要な役割を果たすことを示してきた。本研究では、卵形成期ではCNがSraの脱リン酸化を調節することで、GSK-3betaと拮抗する機能を持つという、より複雑なシグナル伝達のクロストークやフィードバック機構の存在を示唆するデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ショウジョウバエを用いた研究に関しては、当初の計画通りに進まない部分があった。しかし、マウスのプロジェクトに関しては、CNおよびGSK-3をコードする全遺伝子の発現解析と、阻害剤を用いた体外培養・受精実験を完了することができた。現在は、機能が推測される遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの解析に着手しており、全体としての達成度とはほぼ予定どおりと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マウスでのCN、GSK-3の機能をより詳細にするため、Zp3-Cre系統との交配により、卵母細胞特異的な遺伝子ノックアウトをおこない、妊性、卵成熟、受精率への影響を詳しく調べていく。また、阻害剤による実験で観察された融合異常の原因を生化学、細胞生物学的手法により究明することで、ほぼ未解明である受精の分子機構を知るための手がかりを探る。ショウジョウバエの研究に関しては、リン酸化抗体を用いた解析や結合実験などにより、Sraのリン酸化調節機構を明らかにしていくとともに、CNの基質や下流のシグナル経路の特定を目指し、生化学的、遺伝学的なアプローチを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、主にマウスの購入費、情報収集のための国内外での学会参加費に充てた。マウスプロジェクト立ち上げと体外培養系を用いた基礎データの収集に力を入れたため、次年度での使用額が生じた。 平成26年度は、薬品(抗体・遺伝子工学用試薬)や実験動物の管理・購入費、研究成果を発表するための論文投稿費や学会参加費として使用する予定である。
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