研究課題/領域番号 |
25840086
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
林 利憲 鳥取大学, 医学部, 准教授 (60580925)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イベリアトゲイモリ / 心臓再生 / 心筋細胞 / トランスジェニック / 細胞系譜 / コンディショナルノックアウト / CRE-loxP |
研究実績の概要 |
イモリ心筋組織の再生に寄与する細胞の特定と、再生過程を制御する遺伝子の同定、さらにその機能を解明することが本研究の目的である。目的達成に向けて(1) 再生過程に於ける細胞系譜追跡の為の遺伝的ラベル法の確立、(2) 遺伝的ラベルを駆使した細胞系譜の追跡による、再生心筋組織に対する寄与の特定、(3) 再生時・細胞種特異的な遺伝子破壊(コンディショナルノックアウト)法と遺伝子発現誘導法の確立、(4) コンディショナルノックアウトや遺伝子発現誘導を介した、心筋再生における遺伝子機能の解析、の4項目を計画している。 これらのうち、平成26年度は主に(3)にある再生時・細胞種特異的な遺伝子破壊(コンディショナルノックアウト)法の確立を推進した。実際に破壊を目指す遺伝子に対するTALENを作製して、それを使用する為の条件検討を終えた。さらにコンディショナルノックアウトイモリの作製に必須のloxPの挿入方法に関しては、昨年度に予備実験を行った1本鎖オリゴDNAを用いる方法と、ドナーベクターを用いる方法の2つについて挿入効率の比較を行った。 加えて、昨年度目標通りの成果を達成した(1)及び(2)において作製したトランスジェニックイモリを使用しすることで、(4)にある心臓再生の実験に着手した。その結果、イモリの心臓再生過程では分化した心筋細胞が増殖することを示す結果を得た。 これらの研究成果に関連して、招待講演2件を含む10件の学会発表と、著書(分担)の執筆2件を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請において計画された4研究項目のうち、1番目と2番目の項目については昨年度までにほぼ終了している。 3項目にあげた、コンディショナルノックアウトイモリに関しては、作製に向けた条件検討を、実際に破壊実験の対象となる遺伝子座について行うことができた。また再生時期、細胞種特異的な遺伝子発現誘導法の確立に関しては、昨年度までに作製したトランスジェニックイモリを成体まで飼育した上でタモキシフェン処理を行い、心筋細胞特異的にGFPの発現誘導を行った。これらのイモリに対して、心臓の再生実験を行い、その再生過程の解析に着手した。この心臓再生実験は、4番目の研究項目の一部でもある。 最終年度を前にすべての研究項目に着手できていることから、計画全体としては概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が概ね順調に進行している状況をふまえ、最終年度はコンディショナルノックアウトイモリの作製を特に重点的に推進する。この際、イモリゲノムの切断部位に対するloxP配列の挿入が起こる確立(頻度)が重要なファクターとなることがこれまでの研究で示されつつある昨年度までは1本鎖オリゴDNAを用いる方法と、ドナーベクターを用いる方法の2つを試みてきたが、加えて今年度は広島大学の鈴木らのグループによって開発されたTAL-PICH法も導入することで、研究を推進する。 心筋再生における遺伝子機能の解析についても、これまでに確立してきた実験系を駆使することで、目標の達成を目指す。とくに今年度は、イモリ心筋細胞の増殖にとって不可欠な機能を持つと考えられるCyclin D遺伝子について、その再生時における発現機構解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスジェニックイモリ個体の作製法や遺伝子導入個体を選別する手法を改善したことで、必要とされる試薬やプラスチック器具の種類や量が減少したため、支出が減少した。加えて、昨年度のトランスジェニックイモリの作製数が計画よりも少なくて済んだため、今年度もイモリ個体の飼育や管理にかかる費用が減少した。 これらの理由により発生した未使用予算は、次年度に使用する方がより効率的な研究の推進に資すると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は過去2年間の研究の進展状況を受けて、当該年度はコンディショナルノックアウトイモリ個体の作製を重点的に行う。コンディショナルノックアウトの作製にあたっては、様々なパターンのオリゴヌクレオチドの合成を外部に依頼・購入する必要があり、その為の予算として有効に使用する。加えて、作製したイモリ個体の遺伝子型を確認する解析に必要なPCR酵素や電気泳動に必要な試薬類とプラスチック器具類を購入する。さらに大量に作製されるイモリの飼育および維持管理に関わる支出の増加が見込まれる。 上述したように、平成27年度に交付予定であった予算と併せて、研究の推進に向けて有効に使用する計画である。
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