研究課題
細胞死耐性の獲得は、細胞の長期生存に大きく関与していると考えられている。申請者は、細胞死耐性を獲得する3つのショウジョウバエ組織、附属腺・脂肪体・後腸を用いて細胞死耐性獲得メカニズムの解明に取り組んでいる。平成26年度までの研究成果として、附属腺・脂肪体・後腸に共通して獲得された細胞死耐性として、Dcp-1の発現低下が見出された。さらに、Dcp-1の発現低下はエンハンサー依存的であることが示唆された。【平成27年度の研究実績】附属腺・脂肪体・後腸における細胞死耐性について更なる検証を行うために、既知のカスパーゼ遺伝子およびカスパーゼ抑制因子について発現レベルを調べた。その結果、アポトーシス抑制因子Diap1・Diap2の発現に大きな差は見られなかった。一方で、カスパーゼ活性化因子DarkのおよびエフェクターカスパーゼDricが後腸特異的に発現低下していることが明らかになった。平成27年度までの成果により、後腸における細胞死耐性はDcp-1の発現低下のみでは説明できないことが明らかになっている。本研究結果は、後腸特異的な細胞死耐性に関与している可能性が高い。また興味深い点として、イニシエーターカスパーゼStricaが脂肪体、エフェクターカスパーゼDammが後腸、エフェクターカスパーゼDecayが脂肪体・後腸において、それぞれ発現上昇を示すことが明らかになった。これら因子は非典型的カスパーゼとして知られており、細胞死耐性を獲得した組織では特殊な細胞死誘導経路が発達している可能性が示唆された。さらに、細胞死耐性とゲノム修飾の関係を調べるために、ヘテロクロマチン形成に関与するHP1のノックダウンを行い細胞死耐性への影響を調べた。しかしながら、附属腺・脂肪体・後腸のいずれにおいても、HP1ノックダウンによる細胞死耐性の喪失は見られなかった。
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