研究課題
若手研究(B)
これまでの研究から,ポジショナルクローニング法によってインドメダカの性決定遺伝子Sox3Yを同定した.そこで本研究では,本種のSox3が,既存の遺伝子系を流用することで性決定遺伝子として成立したのか(co-option仮説),あるいは全く新奇に遺伝子ネットワークを構築することによって性決定機能を獲得したのか(de novo仮説)を解明することを目的としている.まず,Sox3抗体を用いた免疫組織化学によって発現解析を行うため,ポリクローナル抗体の作製を試みた.しかし,これまでに免疫組織化学で使用可能な抗体は得られていない.そこで,レポーター遺伝子によってSox3発現を検出できるトランスジェニック系統を作出するため,メダカ近縁種それぞれからBACクローンをスクリーニングした.インドメダカについてはSox3YおよびSox3Xの発現を可視化できるトランスジェニック系統を樹立し,これらの系統の解析から,Sox3Yのみが性決定時期の生殖巣で発現することが明らかになった.また,メダカ,ハブスメダカ,ジャワメダカ,セレベスメダカについても,インドメダカと同様にSox3遺伝子をGFPに置換したBACクローンを作製した.これを各近縁種に導入することによってSox3の発現動態を詳細に解析する予定である.また,Sox3の変異体を作出するため,TALENおよびCRISPR/Cas9によるSox3の機能喪失実験を行った.どちらの方法もメダカ近縁種で効率よく変異を導入できることが明らかになり,メダカについてはすでにTALENによる機能欠損変異体を複数得ることができた.現在これらの変異体について,生殖巣における表現型を解析している.また,他の近縁種でもCRISPR/Cas9導入による変異を確認しており,今後これらを交配することによって変異体の表現型を解析する予定である.
2: おおむね順調に進展している
免疫組織化学で使用できるSox3抗体が得られていないため,当初予定していた発現解析はできなかった.しかし,レポーター遺伝子を導入したトランスジェニック系統は予定通り作製できつつあり,インドメダカについてはSox3YおよびSox3Xの発現を可視化できるトランスジェニック系統を複数樹立できた.これらの系統の解析から,Sox3Yのみが性決定時期の生殖巣で一過的に発現することが判明しており,他の近縁種でも同様の方法で発現動態を解析できることが期待される.また,TALENおよびCRISPR/Cas9が,メダカ近縁種でも効率よく変異を導入できることが明らかになり,メダカではすでに変異体を作出することができた.他の近縁種でも変異の導入を確認できているので,今後の表現型解析により,生殖巣におけるメダカ属共通のSox3機能を明らかにできると考えている.
今後はトランスジェニック系統およびSox3ノックアウト系統の解析を予定通り進めることにより,メダカ属に共通のSox3発現パターンと生殖巣における機能を明らかにする.また,TALENおよびCRISPR/Cas9が,メダカ近縁種でも効率よくノックアウト系統を作出できることが判明したため,次にノックイン系統の作出にも取り組む予定である.これによりSox3遺伝子の終末にHAタグを挿入した系統を作出し,これを用いてChIP解析を行いたいと考えている.
ChIP解析の基礎データを得るためゲノムシークエンスの受託解析を申し込んでいるが,解析が遅れる見込みであったため,本実験を平成26年度に実施することにした.そのため,この実験に関連する予算を平成26年度に使用することにした.当初平成25年度に実施する予定であったゲノムシークエンスの受託解析を平成26年度に実施する.また,この実験に使用する消耗品等も平成26年度内に購入する.
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Cytogenetic and Genome Research
巻: 141 ページ: 212-226
10.1159/000354668
Journal of Experimental Zoology Part B: Molecular and Developmental Evolution
巻: 320 ページ: 140-150
10.1002/jez.b.22490