本研究では、不要な神経接続の刈り込みを介した神経回路再編成の分子・細胞メカニズムの解明を目指す。そのために、ショウジョウバエ感覚ニューロンで蛹期に見られる軸索突起の刈り込みをモデル系とし、軸索ガイダンスシグナルの一つであるRoboシグナルの機能メカニズムに着目した。 最終年度には、主にライブイメージングによるRoboの挙動観察の実験系の改善に取り組んだ。これまでに、GFPで標識したRobo(GFP-Robo)を膜結合型RFPと共発現するトランスジェニック系統を樹立していたが、長時間ライブイメージングするにはGFP-Roboの蛍光シグナルが弱いという問題点があった。この点に対し、顕微鏡のフィルターや光路をカスタマイズすることにより観察条件を最適化し、長時間イメージング(~6時間)を可能にすることができた。この観察系を用いることにより、Roboシグナルが軸索突起の「どこで」「いつ」機能しているのかについての手がかりを得られると期待できる。 さらに、国立遺伝学研究所で作成されたRNAiコレクションを利用したRoboの下流因子候補のスクリーニングについても前年度より引き続いて行った。今年度は新たに100遺伝子について検討し、Roboの下流で軸索突起の刈り込みに関与する可能性のある新たな候補遺伝子1個を同定した。これまでに同定した候補遺伝子は合わせて6個であり、これらを糸口としてRoboの新たな下流経路を同定できる可能性がある。
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