感覚ニューロンは樹状突起によって構築される受容野により体外環境を感知している。このとき、受容野の「位置」と「サイズ」は体外環境の位置情報を特定するために極めて重要である。しかし、受容野が形成される位置とそのサイズが、どのような分子・細胞メカニズムで決定されているかに関しては、未だ不明な点が多い。本研究では、受容野サイズの謎に迫るために、モデル生物としてショウジョウバエを利用し、受容野サイズ決定における細胞外環境の役割を明らかにすることを目的とする。具体的には、本年度は、(1)感覚ニューロン受容野のサイズ決定における細胞表面分子Rykの役割の解明、(2)受容野のサイズ決定を制御する新規遺伝子の同定を目指し研究を実施した。 (1)昨年度までにRykの変異体では、受容野サイズが拡大することを発見していた。そこで、最初にRyk発現を再現するGAL4レポーター系統を利用して発現細胞を解析し、Rykが感覚ニューロン特異的に発現することを見出した。一方、受容野が構築される表皮細胞層では発現が検出されなかった。さらに、Rykに蛍光タンパク質GFPをタグ付けしRykの細胞内分布を解析した。GFP結合型Rykは樹状突起内に分布しており、Rykが樹状突起内にて機能することが強く示唆された。(2)細胞内シグナルを伝達する遺伝子約100種類のRNAiスクリーニングを実施し、細胞骨格の再構成因子であるtrioを同定した。trioはWnt5と遺伝学的相互作用を示し、感覚ニューロン特異的なノックアウトにより受容野サイズの拡大を示した。これらの結果より、Wnt5がRykとtrioを介して作用する可能性が考えられるが、今後この可能性をさらに追及していく。
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