研究課題/領域番号 |
25840096
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
大久保 佑亮 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部, 研究員 (80596247)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Notchシグナル / Deltaシグナル / 神経発生 / 体節形成 |
研究概要 |
Notch-DeltaシグナルはリガンドDeltaと受容体Notchが細胞間で結合することにより、Notchの細胞内領域が切り出され核に移行し転写を制御する一方向性のシグナル伝達とされている。この時Deltaの細胞内領域(DICD)も切り出され核に移行することが知られているが、その生理機能は明らかになっていない。本研究では、異なるNotch-Deltaシグナルの生理作用を受ける末梢神経発生と体節形成を対象として、Deltaを受容体としたDeltaシグナルの生理作用を明らかにする。 神経発生:本年度は、Delta like 1細胞内領域(D1ICD)を過剰発現するトランスジェニックマウス及びNotchシグナル伝達能には影響を与えずD1ICDの産生を特異的に阻害するノックインマウスを用い、後根神経節(DRG)のニューロン・グリア細胞分化におけるその役割を調べた。P0-Creマウスを用いDRGの一部の細胞でD1ICDを過剰発現させるとニューロン細胞への分化が促進し、グリア細胞への分化は抑制した。一方で、DRGにおいてD1ICD産生を抑制すると、ニューロン細胞への分化が抑制され、グリア細胞への分化が促進した。また、Wnt1-Creマウスを用いD1ICDをDRG全体で過剰発現させると、DRGの細胞数が著しく減少することが明らかになった。 体節形成:体節は未分節中胚葉が前方より一定周期一定間隔でくびり切れて形成される。Hes7-Creマウスを用いて未分節中胚葉でD1ICDを過剰発現させたところ、尾は太く短くなり分節化が異常となった。DICD産生抑制ノックインマウスにおいても、脊椎骨形成が異常となった。 また、次年度研究計画であるDeltaシグナルの分子機構解析を行うために、DRGから神経堤幹細胞の単離・培養条件の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していた後根神経節神経発生におけるDeltaシグナルの生理作用解析においては、D1ICDが神経細胞への分化を促進し、グリア細胞への分化を抑制することが示唆され、研究は順調に進展している。また、未分節中胚葉におけるD1ICDの過剰発現及び産生抑制により、体節形成の異常が明らかとなっている。しかしながら、D1ICD産生抑制ノックインマウスのコントロールとして用いた変異のないDll1 cDNAをノックインした胚においても、D1ICD産生抑制胚に比べ軽度ではあるが体節形成に異常が見とめられたことから、Notchシグナル活性や、体節時計遺伝子発現を詳細に解析することにより、これらの原因を特定する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
神経発生に関しては、Deltaシグナルの分子機構を明らかにする。コントロール胚及びD1ICD過剰発現胚の後根神経節より神経堤幹細胞(NCSC)を単離培養し、内在性のNotch-Deltaシグナルを活性化させない(細胞同士が接触しない)条件で分化誘導を行い、DeltaシグナルがNotchシグナルとは独立したシグナル伝達か否かを検討する。また、D1ICD過剰発現NCSCを用いてD1ICDに対するIP-MS/MSを行い、D1ICDと結合するタンパク質の同定を試みる。体節形成に関しては、作製したノックインマウスを用いてNotchシグナル活性や、体節時計遺伝子発現を詳細に解析することによりDeltaシグナルの生理作用を詳細に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に計画していた後根神経節神経発生におけるDeltaシグナルの生理機能解析の1つとして、各種マーカーに対する免疫染色を行った。その実験において購入抗体や免疫染色の条件検討が順調に進んだため、予定していた試薬代を大幅に削減することが可能となった。 次年度は、D1ICDに対するIP-MS/MSを行いD1ICDと結合するタンパク質の同定を行い、この結果をもとに二分子間の相互作用を検出するDuolink In Situ PLA法を用いてDeltaシグナルの可視化を検討する。具体的には、Delta like 1の細胞内領域(切断の有無によらない)を認識する抗体及び同定したD1ICD結合タンパク質に対する抗体を用い、D1ICDとその結合タンパク質の結合時(Deltaシグナル活性時)にのみ蛍光標識がなされることを利用し、Deltaシグナルの可視化を試みる。本年度削減可能となった試薬代は、非常に高価なDuolink In Situ PLA法の試薬代として使用することを計画している。
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