Notch-DeltaシグナルはリガンドDeltaと受容体Notchが細胞間で結合することにより、Notchの細胞内領域が切り出され核に移行し転写を制御する一方向性のシグナル伝達とされている。この時Deltaの細胞内ドメイン(DICD)も切り出され核に移行することが知られているが、その生理機能は明らかになっていない。本研究ではDelta like 1細胞内ドメイン(D1ICD)に着目し、後根神経節におけるDeltaシグナルの生理作用を解析した。 D1ICD恒常発現マウス及びD1ICD産生抑制マウスを作製し解析した結果、D1ICDが後根神経節発生において細胞分裂を抑制し、ニューロン分化を促進することを発見した。また、D1ICDはNotch抑制因子であるNumbを介し側方抑制機構の一部として後根神経節発生を制御していることが明らかになった。加えて、後根神経節から単離したニューロン、グリア、筋線維芽細胞に分化する神経堤幹細胞を内在性のNotch-Deltaシグナルが作用しない低密度条件で分化誘導を行うと、D1ICDはNotchとは独立してニューロン分化を促進した。D1ICDはCDKs、MAP kinases、P53と直接結合すること、及びErk1/2のリン酸化を抑制し、P53タンパク質を増加させることを発見した。この結果はDeltaもまたD1ICDを介し独自にシグナルを伝達することを意味している。本研究結果は、双方向性のシグナル伝達であるNotch-Deltaが協調的に側方抑制機構を調節し、それぞれの標的因子を介し後根神経節の細胞増殖と分化を制御することを明らかにした。
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