研究課題
若手研究(B)
NACドメイン転写因子ファミリーは植物特有の転写因子ファミリーで、細胞分化、分裂組織の維持、環境ストレス応答など、生物個体の成長や維持に重要な様々な制御に関わっていることが明らかになっている。NACドメイン転写因子である、VND-INTERACTING2 (VNI2)は道管分化マスター因子であるNACドメイン転写因子VND7と相互作用することで、VND7の転写活性を阻害する因子として同定された。さらに、VNI2は様々な環境ストレスにも関与することが報告されていることから、VND7以外のNACドメイン転写因子についても相互作用し、それらの機能を制御することが示唆された。今年度は、まずVNI2がどのような作用機構でVND7の転写活性を抑制するか検証を行った。VNI2にヘルペスウイルスのVP16転写活性化ドメインを連結したVNI2-VP16を作出し、VND7への阻害効果を検証した。このVNI2-VP16自身は、VNI2単独と比較して、転写活性化能を有することを確認した。それにも関わらず、VND7への転写阻害効果はVNI2単独と同程度であった。一方、FCS解析により、VNI2はVND7のXCP1プロモーターへの結合は阻害しないことが示唆された。これらの結果は、VNI2が何らかの転写抑制因子をリクルートする可能性を示唆している。また、完全長cDNAで構成された転写因子ライブラリを用いて、VNI2と相互作用する新規転写因子の探索を酵母2ハイブリッド法により行った。その結果、30ものNACドメイン転写因子が単離された。シロイヌナズナには、約100遺伝子のNACドメイン転写因子が存在するが、得られた相互作用因子は、いくつかのクラスターに偏在する傾向が見られた。得られた相互作用因子について、T-DNA挿入変異体の収集を行い、形質転換体の確立を進めている。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、まず複数の実験により、VNI2の転写阻害機構について、重要な知見が得られた。得られた結果を踏まえて、来年度新たな実験を行うことで、VNI2とVND7との作用機構についてその分子機構が解明されると期待される。また今年度は、完全長cDNA転写因子ライブラリーを用いて、30ものNACドメイン転写因子をVNI2相互作用因子として単離することに成功した。得られた中には、これまでストレス応答に関与することが報告されているものも含まれていた。今後詳細に解析することで、NACドメイン転写因子複合体の新たな生物学的な役割を発券することができると期待される。一方、VNI2とVND7との結合に必要な領域の同定については、十分な結果が得られなかった。来年度改めて取り組んでいく予定である。
まず、VNI2がVND7の転写活性を阻害する作用機構の解明については、ゲルシフト解析を用いて、VNI2がVND7のDNA結合能に影響を及ぼすか検証する。今年度単離したNACドメイン転写因子の中から詳細な解析を行う因子の絞り込みを行う。具体的には、VNI2による転写活性制御を評価するためには、相互作用因子が転写活性化活性を有する方が有利である。そこで、まず得られた転写因子について、転写活性化能を一過的発現解析により検証する。次に、転写活性化活性を有するものについて、VNI2を導入することで、それらの転写活性化活性の影響を解析する。VND7と同様に、転写活性可能に有為な変化が見られたNACドメイン転写因子について、過剰発現体や変異体を用いた解析を優先的に行う予定である。一方、VNI2とVND7との結合、および転写制御に必要な領域の同定については、それぞれ組換えタンパク質を用いた解析、一過的発現解析を通じて解析を行う。
今年度の研究予算として最もかかると予想された、酵母2ハイブリッドによる新規VNI2相互作用因子の探索が、非常に効率的に行うことができたのが、差額を生じた大きな要因である。また、旅費についても申請していた額よりも安く抑えられた。来年度は、当初の予測よりも数多く同定された、VNI2と相互作用するNACドメイン転写因子の詳細な解析に生じる消耗品等に当初来年度請求していた分と併せて充てる予定である。また、生化学的な解析を行ううえで新たに無細胞発現システムを利用する予定であり、立ち上げ等にかかる費用に使用する。さらに、学会等に出席し、これまでの研究成果を積極的に公表したいと考えている。
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