本課題はNLP転写因子群の分子的性質と生理的役割を明らかにすることを目的としている。本年度はNLP遺伝子群の発現解析と、NLP多重変異体の作成と解析を中心に実施し、生理的役割の解明を目指した。発現解析には、NLPのプロモーター領域の下流にGUS遺伝子を融合させたレポーター遺伝子を発現する形質転換体を用い、葉ではNLP2とNLP7が、根においてはNLP1、NLP4、NLP6、NLP7の発現が強いことを明らかにした。また、機能解析のために、NLPのT-DNA変異体の二重変異体を14種類、3重変異体を10種類、4重変異体を4種類、5重変異体を1種類作出した。一重変異体ではnlp7変異体で地上部新鮮重の減少が見られていたが、nlp6とnlp7の二重変異体にすることでさらに顕著になった。他のnlp変異体とnlp7の組み合わせではnlp7一重変異体と差は見られなかった。また、3重変異体、4重変異体や5重変異体では、nlp6とnlp7の両方の変異を含む組み合わせでnlp6 nlp7二重変異体と同様の表現型となった。このことから、NLP7とNLP6が重複した主要な役割を持ち、硝酸シグナルによる地上部の生長制御に関与していることが明らかとなった。根系の生長についてはnlp6やnlp7とは異なる一重変異体で、マイルドな表現型が見られた。このnlp変異体では、窒素飢餓条件で前培養後、硝酸イオン添加条件で培養すると野生型よりも側根の伸長が良かった。しかし、前培養を硝酸イオン添加条件で行うと差は見られなくなった。昨年度の解析において、このNLPが硝酸イオン非添加時においてもある程度の活性を持つことが示されていたことから、このNLPが窒素飢餓状態で機能して根系の発達に負の作用を起こす可能性が示唆された。
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