研究課題
トランンスゴルジ網(TGN)は、ゴルジ体のトランス槽の外側に存在する網目状の構造体で、ゴルジ体を通過したタンパク質が機能すべき場所に正しく輸送されるための選別を行うオルガネラである。植物細胞では、TGNは初期エンドソームとしても機能するという報告もあり、植物はポストゴルジ膜交通網やオルガネラ機能を動物や酵母とは独立して発達させてきたと考えられている。そのため、植物のTGNの構造・機能を理解することは、植物細胞生物学分野において非常に重要な課題の一つであり、本年度は塩ストレス応答におけるTGNのダイナミクスの解析を行った。1/2MS培地にNaCl(100mM)を加えた高塩ストレス下ではTGNおよび単膜系オルガネラが小さくなることを発見し、超解像ライブイメージン顕微鏡(SCLIM: super-resolution confocal live imaging microscopy)を用いて確認した。また、1/10MS培地にNaCl(100mM)を加えた高塩ストレス下では、TGNを含むポストゴルジオルガネラが凝集体をすることを見出した。この凝集体形成には細胞骨格であるアクチン、微小管は関与しないことを明らかにした。さらに、TGN機能が損なわれたsyp4変異体ではNHX6の細胞内局在が異常になることから、syp4変異体が高塩ストレスに弱くなる原因の一つとしてNHX6が正しく局在できないために細胞内の塩濃度を調整できないことが考えられた。また、TGNが関与する葉緑体機能の発現維持機構を調べるため、病原菌応答において誘導される葉緑体局在因子EDS5(サリチル酸の輸送体)の局在解析を行った。その結果、野生型とsyp4変異体のどちらにおいてもうどんこ病菌感染時にEDS5は葉緑体に局在していた。この結果からEDS5はTGNが担う葉緑体機能の発現維持機構とは関係ないことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ライブイメージングによるゴルジ体とTGNダイナミクスの解析については、2014年に論文発表を行うことができ、当初の計画以上に進展することができた。また、塩ストレス応答におけるTGNの役割についての新たな知見を得ることができた。
今後は、ストレス応答(特に病原菌応答に注目して)におけるライブイメージングシステムを完成させ、TGNの役割の解明を目指す。
平成26年8月に、本研究の主要課題である、TGNが関与するストレス応答の分子基盤を解明するため、うどん粉病菌感染下でTGNを介して輸送される因子の探索を行ったところ、平成26年12月に植物の生育が不十分のため、十分な実験結果を得ることが出来なかったことが判明した。そのため、再度植物を生育して実験を行う必要が生じたため、実験計画に3ヶ月の遅れが生じ、補助事業の本年度中の完了が困難となった。
物品費として、一般試薬300,000円、人件費として、技術補佐員の雇用費250,000円の計550,000円が必要である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件)
Plant Cell Physiol.,
巻: 55 ページ: 694-703
10.1093/pcp/pcu010.
巻: 55 ページ: 811-822
10.1093/pcp/pcu020.
巻: 55 ページ: 727-736
10.1093/pcp/pcu019
巻: 55 ページ: 781-789
10.1093/pcp/pcu038.
Eukaryot Cell
巻: 13 ページ: 648-656
10.1128/EC.00330-13.
Curr. Biol
巻: 23 ページ: 1375-1382
10.1016/j.cub.2014.05.004
Plant J
巻: 79 ページ: 835-847
doi: 10.1111/tpj.12591
Intl. Rev. Cell Mol. Biol.
巻: 310 ページ: 221-287
10.1016/B978-0-12-800180-6.00006-2.
Curr Opin Plant Biol,
巻: 22 ページ: 116-121
10.1016/j.pbi.2014.10.002.